MAYA from West End

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EverydayTalk

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時の面影

最近立て続けに何件か、過去に私が撮った風景写真を見せてほしいという依頼を受けた。そこでネガや紙焼きを保管している棚をひっくり返し、自分でも忘れていた写真をじっくり見ることになったのだが、そのときはっと気づいた。それらの写真のところどころには、今はもうなくなってしまった店や建物の姿がはっきりと写り込んでいた。
当時、当たり前のように毎日通り過ぎていた道。友だちと朝まで遊んでいた店。ちょくちょく顔を出していた友人の会社‥そういうなつかしい場所のずいぶん多くが、今はもう跡形もなく消え去っている。もちろん、東京とはそのような、移り変わりの激しい街だと知っていたはずなのに、実際に自分のこととして事実を突きつけられると結構ショックだった。

そして改めて思い返した。写真という表現手段には、いくつもの意義がある。その美術性、その思想性、その政治性、その同時代性‥そして、その「記録する」という力。
今、私がレンズを向け、フォーカスを合わせた一つの風景が、別の誰かにとって、かけがえのない記録になるかも知れないという責任。
8年前、初めてフルマニュアルのカメラを手にし、おずおずと街に出てファインダーを覗いていた‥あの頃の感情が、再びよみがえっていた。


*下の写真は、2005年3月の朝の渋谷。当時東急高架下にあったクラブ、Seco Barで朝まで遊び、店を出たときに見た風景。




September 30, 2008 13:57
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