西端真矢

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3年目の命 2026/06/30



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子宮体がん手術から、まる3年。
「造影剤CT」という、1年に1度受ける大きな検査を受けた。
単純なCT検査以上のより鮮明な画像を得るために、造影剤という薬物を点滴で血液に入れながら、CTマシーンに入る。
副作用が出ることもあり、なかなかにハードな検査である。

確か手術前にも1、2回受けているから(手術前にあまりにもたくさんの検査をしたので記憶が曖昧になってしまっている)、合計すれば、今回で4回目か5回目。
「ああ、造影剤ね」と鼻であしらうプロ患者である。看護師さんにも「内容分かってますよね」と説明を省かれてしまった。
     *
造影剤が注入されると、1分後ほどから体が熱くなって来る。まず足先、ふくらはぎ、腕、首。
自分の体内を確かに血液が流れ、循環している。それも非常な速さで。
哲学、政治、美、礼節、名誉、愛‥‥すべてが剥がれ去り、人間とは数十億年をかけて形作られた生物システムであることを実感する、瞬間。
幸いにも転移の兆候は見られず、次は半年後に来ればいいと先生がおっしゃる。
今年も命の試験を通過したのだ。
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帰り道、ふと思いついて、院内の庭に寄ってみる。
入院していた病棟のすぐ足もとに広がる庭で、手術後、リハビリのために毎日散歩していた。
‥‥と言っても当時は半歩ほどの歩幅でしか歩けなかったから、庭全体をめぐるなどとても無理で、入口で見渡すだけで満足していた。
ふと足もとを見ると、敷石の隙間から小さな葉が顔を出していた。3年前、この草はなかったと思う。
確かに命は動いている。

染織修復室見学へ 2026/06/27



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今日は台風の中、雨ニモ負ケズ、一ツ橋の共立女子大へ。
家政学部被服学科に先月開室した、歴史的染織品修復のためのラボラトリー見学会に参加した。

今年の年頭、このラボラトリー「共立女子大学染織文化財保存修復室」で使用する高度な専門機材購入のためのクラウドファンディングが行われていて、私も些少ながら寄付をしたところ、見学会にご招待を頂いた。
たとえば戦国時代に姫君が着ていた小袖、法隆寺に伝わる天平時代の裂、江戸時代の能装束⋯⋯などなど、共立女子大被服学科では、過去70年にわたり数々の貴重な染織品の修復に携わって来たという。
ただ、専用のラボを持つのは今回が初めてで、これまでは授業後や夏季休暇中の教室を使って修復作業を行い、一時は学内の理解を得られず、有志でお金を工面して学外に場所を借り、運営していた時期もあったとのこと。
染織に対する熱い思いに心から敬服する。

そんな苦労を乗り越えてラボラトリー開設を迎え、今日は室長である田中淑江教授が修復作業の要点や特に苦労する点などをご説明くださり、また、室員の高橋さんが実際にデモンストレーションもしてくださって、修復というものがいかに根気のいる仕事なのかということがよく分かった。
     *
そして、田中先生が、私たちが寄付した資金でどの機材を買い、それがどのように修復に役立っているのかを実に丁寧に、情熱を持ってご説明くださったので、ああ、寄付して良かったな、としみじみと嬉しい気持ちになった。
一緒に参加した方も同じことを思われたようで、「嬉しいですよね」などと、初対面同士で笑顔を交わし合ったのも、ほのぼのと楽しくて。
     *
私はきものが好き、布が好きだから、この国の優れた布たちが後世に、永遠に伝わってほしいと願っている。
ほんの少しだけ、そのお手伝いが出来たのだと思うと、帰りもまだ雨は降っていたけれどスキップするように街を歩いた午後だった。

竹細工の盆 2026/06/24



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最近我が家に加わったもの。
京都に工房を構える「竹桐舎ちきりや」さんの竹の盆。
庭の花を切って部屋に運ぶ時。それから、そうやって生けた花が命を終えた後、庭の土へ帰しに行く時。
そんな二つの用途に使おうと思って求めた。
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花を土に戻すことは、とても大切にしている自分のルールだ。
マンション住まいなら、枯れた花をゴミとして扱うことは仕方がないけれど、庭のある家に住んでいる以上は、土に帰す。これは花に対する敬意だと思っている。葉一枚でも、必ずもともと生えていた草木の根元に帰すようにしている。
  *
ただ、その時に、これまでは新聞紙や商店のチラシなどに包んでいた。まるで美しくなく、見えていないふりをしたりして。
一方で私は〝英国ミステリードラマ鑑賞〟も趣味としているのだけれど、ガーデニングの場面を見るに、どうやらかの国では庭で摘んだ花を部屋へ運ぶためだけに使う、専用の浅型バスケットがあるらしい。素敵だなと憧れていた。
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そんな中、先日三鷹の「かわせみや」さんを覗いてこの竹盆に出逢った。
これならきもので庭に出た時にも添いそう!とひらめき、ふだんあまりその日のうちに即決はしない方なのだけれど、求めることにした。
実際に使ってみると、写真の通り、長さも、幅も、庭から切った花を載せて運ぶのにちょうど良い。もちろん、土に帰しに行く時にも。
そしてとても美しい。
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それにしても、花を運ぶためだけに使うには、この盆はあまりに贅沢だ、とも思う。
小さなガラス器を二つ三つ載せてそれぞれに花を生け、花器の一部として使うの良いかも知れない。或いは友人が遊びに来た時など、冷菓を入れたガラス器を載せて運んでもいい。
ともかく、少し背伸びして手に入れたこの盆は、これからより深く庭に関わっていくという、一種の決意表明なのである。

上野散歩 2026/06/17



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昨日は上野散歩へ。
「婦人画報」「美しいキモノ」両誌の元編集長で、現在はエディトリアルプロデューサーとして活躍されている 富川匡子さんのお買い物のおともで、まずは「道明」に。
ご当主の道明葵一郎さんもいらっしゃり、上野店のあのずらりと帯締めが並ぶ素敵な店先で、あれこれとお品を拝見。近々素敵なお品が富川さんの「京都きもの市場 きものと」での連載などでご覧になれるはず!皆様お楽しみに。
     *
その後、老舗甘味店「つる瀬」であんみつなど食した後、家へのお土産のお菓子を見に「うさぎや」へ。上の写真はその店先にて、富川さんと。
本当は着付け師の奥泉さんも一緒だったのだけれど、昨日はお洋服のため、二人で。
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私のきものは、「むら田」さんで誂えた絓引き(しけびき)の単衣で、昨日が初下ろし。
寄りの写真でお分かり頂ける通り、斜めに縞が走るしゃれたきものに仕上がって、とても嬉しい。
こちらの絓引きを手掛ける京都「松樹苑」さんの通常の絓引きよりはだいぶ淡い調子で、もしかしたら、
「お江戸の方は、ずいぶんとぼやけた色がお好きどすなあ(偽京都弁)」
と思われたかも知れないが、私の好みで、淡め淡めに仕上げて頂いた。
帯は、こちらもむら田さんで、亡き先代あき子さんのお見立てで織って頂いたすくい織のなごやを合わせ、むら田尽くしのコーディネイト。以前夏用に求めた薄水色の道明の帯締めがなかなか効いているのでは、と自画自賛で思っていたら、皆様にもおほめ頂いて嬉しい。
     *
ところで、「うさぎや」さんと言えば、何と言ってもどら焼きの名声が東京一円にとどろいている。
‥‥しかし!私は熱狂的上生菓子ラバーのため、昨日もまっしぐらに練切に向かった。
外見から、これは美味しいぞ、と予見した通り(上生菓子の美味しい/不味いは不思議と見た目でほぼ分かってしまう)、今はなき阿佐ヶ谷「うさぎや」さんと瓜二つの味に感激。これからは上野方面に来たら、必ずこちらに寄る!と決める。
     *
それにしても、上野はもともと江戸時代に御家人たちが住んだ、幕府お膝元の街。
それが今は外国資本による、しかも何とも言えず風情のない店が大量に軒を連ね、歴史好きほど歩いていると悲しくなってしまう。
それでも、ぽつぽつと、そして泰然と、こうして老舗が昔ながらの良い品々を提供してくれていることに希望を見出したい。

岩瀬健一さんの個展へ 2026/06/12



一昨日は新宿の柿傳ギャラリーに、陶芸家 岩瀬健一さんの個展を拝見に伺った。
土肌を感じる灰釉、また、粉引を中心に、茶入、茶碗などの茶道具から、花入、徳利、向付など、暮らしの中で使うこともかなう器まで。今回の個展に向けて、三年をかけて取り組まれて来たという約百点の作品を堪能した。
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岩瀬さんの作品との出会いは、五年ほど前になるだろうか。
三鷹の陶器店「カワセミヤ」さんで、力強さと現代性を兼ね備えた灰釉の四方皿に心惹かれて、求めた。
その後、メールではやり取りをさせて頂いていたのだけれど、実際にお会いするのは今回が初めて。
厳しい方かしらと想像していたけれど、まるで陶器の元となる土そのもののような温かいお人柄にすっかり緊張が解け、ほっこりとしてしまった。お嬢様、奥様とのお話も楽しく、いつか高尾の先にあるという工房も訪ねてみたい!
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そして、今回、一点作品を求めた。写真のどこかに写っているので、どの作品か推測なさってみてください。
数週間後、我が家に届いたら、以前求めた四方皿とともにご披露いたします。

岩瀬健一個展「まだ見ぬ方の花をたずねて」
柿傳ギャラリーにて、明日、6月12日まで
11:00~19:00 (12日は17:00まで)

三鷹散歩 2026/06/08



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前回の投稿とはだいぶ変わって、洋服、それも木綿ワンピースのカジュアルスタイルで出かけた日の記録を。
毎日きものだけを着ている訳ではもちろんなく、洋服のカジュアルスタイル、特にビッグシルエットのワンピーススタイルが大好きです。
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この日は、仲良しのフォトグラファー、升谷玲子さんと三鷹散歩に。
まずは果実商が経営するフルーツパーラー「cafイチフジ」へ。並ばずに入ることが出来たのは僥倖!
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麻原彰晃か私か、というくらいのメロン好きのため、メロンパフェ+メロンジュースのメロン尽くしを頂いた(升谷さん撮影の写真が、携帯でさっと撮ったものなのに、さすが、美しい)。その後、気になる雑貨店や陶器店をあちこち周る楽しい一日だった。
      *
一枚目の写真は、その中の一軒、民芸系の雑貨店「手しごと」にて。柳宗悦と親しかった父方の祖父の影響もあり、私はどうも民芸の美意識に心惹かれる。民芸に少し北欧風味を足したインテリアのスタイルが自分の好みだ、と、最近ようやく分かって来た。

そして、ドイツとフランス、栃木と群馬、千葉と埼玉‥‥隣り合った地域は仲が悪いことが多いけれど、吉祥寺と三鷹はまったくそんなことはなく、一体化している、と吉祥寺住民の私は思う。吉祥寺と西荻もしかり(ちなみに升谷さんは西荻育ち)。
三つの街のそれぞれに個性的な、素敵な店があり、中でも三鷹は本当に普通の住宅街や商店街に突然ぽん!と現れるかんじがとても楽しい。
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升谷さんと私の山ぶどうのバッグは、偶然、吉祥寺の同じ店で購入していたもの。
私のものは中央に編み込み模様が入り、升谷さんのものはシンプル。
まったくお揃いではないお揃いというのが何ともほど良くて嬉しくなる。仕事を通じて知り合い、もう十年以上のつき合い。次は浴衣でのお出かけを企画中!