西端真矢

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「お着物の記 三 クソ欧米ナイトにて」 2010/06/16



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先週日曜日、お着物で外出。
世田谷区下馬にある「下馬土間の家」で開かれた文化系シンポジウム、「原理主義ナイト」に参加しました。

下馬土間の家は、築80年ほどは経っていると思われる古い日本民家を改造した、ギャラリー兼住居。農業を中心に、現代日本社会の諸問題に!日本アート界の諸問題に!切り込む団体「ナリワイ」が運営しています。
http://nariwai.org/

では、「原理主義ナイト」とは何かと言うと、今、日本人が日々の生活の中で感じるもやもやとしたあれやこれやの問題、何でこうなってしまったんだろう?と考えて行くと、行き着く先は200年前、そう、ちょうど今の大河ドラマ「竜馬が行く」の時代に明治維新で無理やり股を、いや失礼、国を開かされて欧米基準に合わせようとした、その無理がたたってこうなっているんじゃないか?そもそも欧米基準に合わせる必要なんて、我々日本人にはあったのだろうか?そんなに欧米さんは偉かったのか?欧米さんに考えなしにおもねってしまった日本人の奴隷根性を、ここらでいいかげん何とかしないといけないんじゃないか?‥そんな問題意識、一言で言うと「クソ欧米主義」を掲げる、めちゃラディカルな勉強会なのです。
毎回、気鋭の若手研究者が自分の研究テーマを軸に、「クソ欧米主義」をめぐってラディカルな発表を行い、発表の後は参加者から活発な質問や議論が飛び交う‥という素晴らし過ぎるシンポジウム。(毎回、参加者は25名くらい) これまでに2回行われていたものの、私はいつも原稿の締め切りに追われて参加出来ず、今回やっと参加することが出来ました。
‥で、「クソ欧米主義」に敬意を表して、着物を着用。会場に着くと、ナリワイ主宰の伊藤洋志くんも、当日の発表者奥田あゆみちゃんも着物で参加していたので、めちゃテンション上がる!‥なのに、三人で写真撮るの忘れた‥(号泣)

‥と、そんな私的問題は良いとして、当日の奥田あゆみさんの発表は、「明治日本における「芸術」概念の輸入をめぐる問題~~特に絵画を中心として」とでも要約すべき、非常に面白く、非常に難しい問題をめぐって行われました。
慶応大学・東京大学大学院を通じてこの問題を考え続けている奥田さんの論の立て方は大変緻密で洞察は非常に深く、発表終了後も参加者から次々と質問や意見の表明があり、まだまだ議論し足りなかった!というのが本当のところ。私も大変大きな示唆を受け取りましが、それが自分自身が持っている命題とどのようにつながっているのか‥ということをここで書いていると軽く卒業論文一冊分くらいにはなってしまいそうなので、今のところは脳内に納めておくとします。
何はともあれ、発表も、参加者のレベルも非常に高いこのイベント「クソ欧米主義 原理主義ナイト」はこれからも続いて行くので、また是非参加しようと思います。

        *

さてさて、女の子読者が楽しみにして下さっているので、当日着て行った着物について書いておくと‥
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*綿の単衣(ひとえ)の着物。単衣とは、裏地の付いていない薄手の着物のこと。6月1日の衣更え後、6月いっぱい+夏が終わった9月、のたった2カ月の期間だけ着る着物です。
綿の着物は、いわゆる普段着の着物。今回のように民家で開かれるイベントにピッタリだと思って択びました。

*この着物は、最近入手したもの。でも、実はお店で買ったものではないのです。
先月の終り、mixi内のお着物コミュニティで、原宿に住む或る女性からこんな呼びかけがありました。
「愛知の実家のお蔵から、おばあちゃんの着物がたくさん出て来ました。私にはサイズが小さくて着られないので、小柄な方に安値でお分けします」
それに答え、「是非頂きたいです!」という声が続々高まったため、結局その女性のご自宅で頒布会が開かれることに。私も参加して、二枚の単衣を購入させて頂きました。おそらく一度も着ておられなかったようで、大変きれいな状態の着物を入手出来てハッピー。
この女性のご実家はお寺だということで、今回の頒布会の収益は古くなったお寺の建物の修繕費に充てるそう。そんな素敵な目的にお代が使われると知って、ますますハッピーな気持ちになりました。

*話はちょっと変わりますが、私は、着物は、派手が好みです。
渋い江戸趣味ではなく、明るく華やかな気分になれる派手な着物、派手な組み合わせが大好き。母方の曽祖母二人が金沢の出身なので、おそらくそのDNAが知らず知らずのうちに、私を派手着物へと誘導しているのではないかと感じます。
常々思っていることなのですが、最近の若い女性は洋服の考え方をどうしても引きずってしまうのか、若いうちから地味な着物を着ようとするのが、私にはとても残念なことに思えます。私の記憶の中でひいばちゃま(←曽祖母のことをこう呼んでいた)が着ていたような、地味~な着物を着て「粋だ」と思い込んでいる二十代・三十代の女性を見かけるにつけ、思わず首をかしげてしまうのです。
若いうちはもっともっと、日本の派手な色ととことんつき合って、遊ばなきゃ、格闘しなきゃ!そして年をとって落ち着いて来たら、渋い色を着こなす!これこそが本当の着物とのつき合い方だと思うのですが、まったくもって洋服文化に毒されてしまった現代の日本女性。ああ、これこそ正にクソ欧米主義の悪影響なのかも知れません。
確かに侘び茶に代表されるように、日本人には渋好みの感覚もありますが、決してそれだけではない。友禅や金屏風に代表されるような、日本人の絢爛豪華・派手好みDNAよ、目覚めよ!と叫びたいのです。
‥と言う訳で、長くなりましたが、今回私が択んだ着物も、派手で元気な橙々色と黄色。模様は矢絣(やがすり)模様です。

*帯は、もともと家にあった絹の平織り花模様。この帯、どんな着物にも合うのでとても重宝します!

*今回は帯締を黄色にして、全体を引き締めてみました。

*帯揚げは、白から水色へと色変わりしていく絹の縮緬(ちりめん)地。途中途中に青の絞りで紫陽花(あじさい)の花が描かれているので、今の季節にピッタリだ!と択びました。‥と言っても結んでしまうと紫陽花だか何なのだか、見る人には全然分からないのでほぼ自己満足の世界ですが‥

          *

今回すごく嬉しかったのは、以前から顔見知りだったあゆみちゃんが、お着物好きだと判明したこと。私と同じくおばあちゃん・お母さんの着物が大量に家にあるらしく、好敵手現る!といったところ。これから二人であちこち着物で出かけようと誓い合いました。
そして、「原理主義ナイト」主宰のピンポンダッシャーちゃんも、今後お着物をどんどん揃える予定なので(着付け教室も一緒に通うかも~)、お着物友だちがまた一人周りに‥。ああ、真剣に嬉しい。

更に驚いたことに、ごく最近某編集プロダクションから新しい仕事の依頼があり、打ち合わせに出かけてみると、何と所在地は浅草。浅草と言えば呉服店や和装小物の聖地!打ち合わせの後、蟻地獄にはまったようにぐるぐる歩き回り、なかなか家に帰れませーん。
‥そんな訳で本が出るまでのこれから数カ月、浅草に頻繁に通うことになりそうです。ますます坂本竜馬並みに前のめりにお着物街道を驀進する私なのです‥