2012年 / 9月 / 8月 / 7月 / 6月 / 5月 / 4月 / 3月 / 2月 / 1月 / 2011年 / 12月 / 11月 / 10月 / 9月 / 8月 / 7月 / 6月 / 5月 / 4月 / 3月 / 2月 / 1月 / 2010年 / 12月 / 11月 / 10月 / 9月 / 8月 / 7月 / 6月 / 5月 / 4月 / 3月 /
晩夏の夜、夏の着物で最後のお出かけ (2012/09/10 )
偽おはしょりの作り方! (2012/09/01 )
おばあちゃんの世界 (2012/08/21 )
ちょっと珍しい柄の手ぬぐい入手!+草の根の被災地支援 (2012/08/15 )
四国・保多織りの浴衣で、友人の書を見る (2012/08/09 )
我が家の猫はちょっと性格が悪い? (2012/08/07 )
昼顔の絽のお着物で、浅草散歩 (2012/08/01 )
珍しい、蝶の文様の浴衣でお出かけ (2012/07/26 )
福島直後の東京をつづった散文詩、香港のアート雑誌に掲載 (2012/07/24 )
© 2011 Maya Nishihata
All Rights Reserved.
「給湯室で茶道を!」 2010/09/15
ツイート
今年の冬、確かお正月明け頃だったか、友人のピンポンダッシャーちゃんから撮影仕事の依頼を受けた。ピンポンダッシャーちゃんはバリバリのキャリアウーマンとして某出版社で編集者をする傍ら、プライベートの時間に、アートと社会運動を結びつける活動を幾つも主宰している。
‥‥こう書くと、何かとても小難しいことをやっている人では?と思われてしまいそうだけれど、彼女の活動の素晴らしい点は、アートと社会運動を「ユーモアによって結び付けている」という点で、人生で最も大切なことの一つは、ユーモアではないか?‥‥と常日頃思っている私にとっては、まことに賛同出来る活動ばかりなのだ。現代美術に詳しい方は、赤瀬川原平の活動を思い浮かべて頂くと、わりと近いのではないかと思う。(ちなみに6月16日の日記で書いた「クソ欧米ナイト」も彼女が主催する勉強会です)
さて、そんな彼女が新しいアート社会活動を始めると言う。「その様子を写真に撮ってほしい」という依頼なので、どんな活動なのかと話を聞いてみると、まず、活動の名前は「給湯流」。どの会社にも必ずあるあの畳一、二畳ほどの空間、給湯室。そこを茶道の茶室に見立てて、お茶を点てちゃおう!という活動だそうだ。
その心は、茶道というのはそもそも戦国時代、斬ったはったを日々繰り広げていた武士とその周りにいた茶人たちによって今の形に完成したものであり、明日は、明後日は、来月は、来年は自分は生きているか分からないという緊張した毎日の中で、一期一会の心で茶を囲んで向かい合い、もてなし合うことがその本質だった。
ところがそれがいつしか時を経て‥‥特に戦後の平和日本になってから、ただ細かいルールだけをやかましく監視し合う、おばさまたちの暇つぶし習い事へとなり下がってしまった。茶道自体は素晴らしいものであるはずなのに、このままでは、「人の所作と生活芸術の総合美」である茶道が衰退する一方なのではないか?給湯室を金持ち着物自慢ばばあたちから解放せよ!というのが給湯流の根本理念だというのだ。
ふーんなかなか面白い。
ところで、では、何故給湯室?という点は、現代の武士とは、ビジネスという戦場で斬ったはったを繰り返すサラリーマンでありキャリアウーマンでありOLである、と捉え、その戦場の真っただ中にある休憩空間・給湯室に着目(とても狭い点も茶室に似ている)。
高価な着物にわざわざ着替える必要もなく、仕事時間の服装のままで給湯室の床に座り、ポットや紙コップを使ってお茶を点て、ひととき一期一会を噛みしめよう‥‥それが給湯流の精神だというのだった。
*
非常に面白いと感じ、さっそく撮影を承諾した私だったけれど、困ったことに、茶道のたしなみがない。何かを本歌取りするとき、或いは何かのパロディーをするとき、その元になった歌を知らずにやるのでは大変浅はかなことになるのは自明の理である訳だから、これは一念発起して茶道を習わなければいけない、と思った。
そこでピンポンダッシャーちゃんに、「あまり厳し過ぎず、月に1度くらいのペースでゆったりとお茶を習える教室ってないかな?」と相談すると、幸い我が家からごく近い駅にピッタリの教室があった。
そして、最初の1回目は洋服で通ったものの、やはり(給湯流ではなく)伝統的な茶道は着物で学んだ方が所作をつかみやすいことが分かり、2回目からは着物で通うことにした。すると突然、曾祖母の代からの着物DNAが500年の眠りについていた休火山のように大噴火し、現在、一日最低3時間は着物のことを考えている‥‥という思わぬお土産もついて来たのだった。今やお茶はわりとどうでも良く、着物の方ばかりに熱中している私なのである!
*
‥‥と、そんな私の着物熱は良いとして、その給湯流の公式ウェブサイトが七月の終りにオープンした。
http://www.910ryu.com/
この中に、私が撮影した写真も散りばめられているので、是非ご覧頂ければと思う。
また、給湯流は「トーキョーワッショイ」というサイトにも連載を持っていて、そちらは2週間に一度更新。
http://tkyw.jp/こちらには、私がデジタルカメラで撮影した給湯流の写真が時々アップされる。主に、給湯流独自の笑えるお点前ルールを紹介する写真が中心。給湯の理念が良く分るので、こちらも併せてご覧ください。
また、Twitter上にも給湯流のアカウントがあり、「RIQUE & NOBU & ORIBE」というのがその名前だ。茶道の大成に深く関わった五人、利休、織部、小堀遠州、信長、秀吉がフォロワーのツイートに絶妙のツイートを返してくれる仕組みになっていて、パンチが利いていてとても面白い。Twitterをやっていない私も、これだけのためにTwitterに入ってもいいかなと思うことさえあるほどだ。
http://twitter.com/910ryu
例えば、Hさんのツイート
「明日は海へ行く!」
に対してRIQUE & NOBUの返しは、
「おぬし、高麗の白磁器がごとく色が白いのじゃから、日焼けだけは気をつけるぞよ」(ORIBE FURUTA)
Mさんのツイート(ワールドカップ時)
「オランダ戦後半から見たいのに。気合いで仕事切り上げたのに電車止まった。乗ってる電車が止まった」
に対して、
「あせるでない!天下統一はこれからよ」(HIDEYOSHI)
Hさんのツイート
「野球部の先生がアウトローに投げろ!って中学生のおれたちに力説してた。汚くてもいいんだ、打たれなければ!」
に対しては、
「なかせてみよう!ホトトギス」(HIDEYOSHI)
‥‥って、面白いなー。
私も、「イ・ビョンホンかっこいい!」とか、「うーん今月お金ないけどあの反物仕立てちゃおうかナー!」などと呟くと、利休が「うむ、高麗物は非常に良い」とか、織部が「各地の大名様も、肩衝き一つのために散々御無理をなさっておりますからのう」などとツイートを返してくれるのだろうか?楽しそうです。
*
さて、今日の日記に上げている三枚の写真は、給湯流の本サイトのためにフィルムカメラで撮影したもの。謂わば、作品としての給湯流写真だ。
モデルさんではなく、実際に営利組織に所属して、月曜から金曜まで電車に乗ってその組織へと通い、“現代のサムライ”として戦っている方々に、本物の給湯室で給湯流茶道を行ってもらった様子を撮影した。偶然にも美男美女が揃って見目麗しく、また、厳粛な中にも「何故こんな変な所で茶道を?」というおかしさも伝わる写真に仕上がっているのではないかと思う。
現在、給湯流では、給湯室を半日ほど開放して給湯流茶道を実践させて頂ける会社・事務所を募集中とのこと。ご興味のある個人、団体の方々は、ゼヒホームページ内の連絡先にご一報下さい。
給湯流がきっかけとなってお茶に興味を持つ人が増え、古来からの茶道が堅苦しいおばさま作法から解放され、のびのびと活性化したら‥‥本当に素敵だと思う。
(続けて、タイ・バンコクでの写真展のニュースもこちらに↓)