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「お着物の記 九 秋の初めの二枚」 2010/10/22
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ここのところぼーんやりしていて、日記の更新が滞ってしまいました。
現在、仕事はそれほど差し迫っていないのですが、次の本の企画が始まっていて、また、気が早いのですが次の次にやりたい本の下調べも進めたりしているので、頭の中がとても忙しいのです。脳の容量が少ないせいか、そうするとあまり日記の文章を書けなくなってしまったり。
さてさてそんな中、今日は最近着たお着物を二枚ご紹介。
一枚は、こちら。編集者の方々とのレストランお食事会に来て行きました。
*典型的な紅型文様の着物。祖母が染めたものです!かわいいでしょ!
*このような薄藍色のお着物は、お着物世界の昔ながらのルールに従えば、もっともっとずっと年齢が上がってから着るもの。でも、この文様が大好きな私は、今回、「帯を派手目の色にしたら大丈夫なんじゃないか」と敢えてトライしてみたのですが‥‥やっぱりちょっと地味過ぎでしたね。何だか、老けているような、でも若いような(帯のせい)、不思議なかんじになってしまいました。失敗したけれど、良い勉強に。このお着物は六十代くらいになったらまた着倒そうと思います!
*帯は、10月8日の日記で黒の大島に合わせていたのと同じもの。
*ところで、この帯の文様の出し方にご注目下さい。敢えて文様が少し右にずれるように締めています。これは、日本的な美意識の表し方。
着物に限らず、日本美術は、庭園でも器への文様付けでも屏風でもふすま絵でも、決して左右対称を目指しません。「左右非対称」、これが、日本美の最も要となる意識ではないかと考えています。西洋だったら、こういう文様は、必ず体の中央に来るようにデザインされるはず。それを敢えてずらすのが日本の美意識であり、私はこの美意識が骨の髄までしみ込んでいる人間です。
二十代の頃まで、父がイタリア関係の仕事をしていることからしょっちゅうヨーロッパへ遊びに行っていたのですが、ベルサイユでもシェーンブルン宮でもボルゲーゼ公園でも、私は西洋の庭園を歩いていると、だんだん気分が悪くなって来てちょっとめまいがしそうになってしまいます。それは、西洋の左右対称の美意識がどうしても自分に合わないから。左右対称にしてしまうと、「抜け」や「間」が感じられず息苦しいし、人工的に過ぎると思うのです。げに美意識は或る種の人間にとっては、生理現象まで左右してしまうものなのだと思います。
*帯揚げは、すみれ色。帯締めは水色で明るさを演出してみました。
*
さて、もう一枚の取り合わせは、こちら。
お茶のお稽古の日に来て行った、普段着の装いです。
*格子文様の紬。これは祖母の家から持って来たものですが、ちょっと手が短いので、おそらく大叔母か曾祖母??誰か祖母以外の人が来ていた着物だと思われます。古い着物ですがどこと言って汚れもなく、お稽古の日に着るのにぴったりなふだん着です。
*帯は、祖母が染めた紅型。里山が紅葉し始めた頃の風景を描いたものでしょうか。すごく好きな文様です。お教室の皆さんに褒めて頂き、感激。
*帯揚げはすみれ色、帯締めは青にところどころ色の入った民芸調のもの。
*この帯揚げは、いつもお世話になっている吉祥寺の「ふじや」さんで特別にお安くしてもらったもの。見えないところにちょっと難があるためです。
「ふじや」さんは、戦前から吉祥寺で商売をしている呉服屋さんで、パルコの1階に、パルコとは別の入口から入る形で店舗があります。実はもともとこの土地は「ふじや」さんのもので、「ふじや」さんの方がパルコに場所を貸している‥‥つまりパルコの大家さんなのだとか。
そのせいで経営に余裕があるためか、ここのの番頭さんは皆さん「売らんかな」ではなく、本当に親身に接客をして下さるので私たち親子はとても気に入っています。他のお客様への接客を見ていても、その方その方の予算に合わせてじっくりとお品物を見せていて、こうでなくっちゃ!と。
若い世代が呉服屋へ行かなくなった理由は様々にあると思いますが、よく話に聞くのが、ちょっと足袋を買いに行っただけなのに、ぐるぐると反物を体に巻きつけられて、「素敵」「お似合いよ」「12回分割で買えばいいのよ!」などと押し売りされる‥‥そういう呉服屋さんが残念ながら結構多いようなんですよね。これでは恐ろしくておいそれと呉服屋には近づけません。
若くてあまり知識のないお客さん、なけなしの貯金を握りしめてやって来たお客さんたちが、ゆっくり心に余裕を持って、時間をいっぱいかけて本当に似合う一枚を探し出せるような、そういう呉服屋さんがもっともっと増えて行ってほしいなと思います。心から!