西端真矢

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お着物の記*この2カ月間に行った着物に関する勉強会あれこれ 2011/03/02



またもやバタバタと忙しく日記の更新が滞りがちですが、今日から1日おきに3連続、たまっていた「お着物の記」日記をお送りしたいと思います。皆様、1日おきに覗きに来て下さいね!

さて、今日はいつもの日記とは少し趣を変え、この2ヶ月間の間に私が顔を出した着物や染色に関する講演・勉強会・イベントの体験レポートをお届したいと思います。
実は、今年の私の隠された野望、着物に関するお仕事を獲得すること!なのです。ふふふ‥。
そんな訳で、ただ「着物が好き!」だけでは仕事は来ないと思い、着物に関する体系的な知識を見につけようと決意。今年に入ってから行ける限り、あれこれの勉強会に顔を出すことにしました。もちろん様々な本も読んで文字からの知識を頭に入れてもいますが、実際に先達の話を聞いたり、作業工程を自分の目で見たりすることも同じくらい大切。今年に入ってからの2ヶ月間で、以下のイベント・勉強会に顔を出しました。

1月
*松屋銀座で開催の、「池田重子 日本のおしゃれ」展(ちなみに会期中に2回行きました!)
*上記展覧会の関連イベント、「池田重子先生×小宮悦子さん×IKKOさんのトークショー」
*着物イラストレーター松田恵美さんの展覧会「きもの番長」展

2月
*NHK文化センターにて、丸山伸彦教授(日本服飾史)の公開講座「古典文学ときもの」
*すみれ堂着付け教室にて、銀座結びのレッスン
*東京・中井で開かれた染色のイベント「染の小道」
*人形町ころもやにて、三人の女性着物愛好家によるトークショー「美女と着物 『カッコイイ着物姿』って何だろう?」

3月
*吉祥寺あもにて、染色の一技法である「鹿毛引き(しけびき)体験講座」

‥と、全部で八コ!大体1週に1度は何かしらの着物イベントに参加して来ました。学者の家の娘のせいか体内に「学び好き」の血がどっぷり色濃く流れているようで、すぐこうやって熱中してしまうんですよね。ちなみに今読んでいる本は上記丸山先生の『江戸モードの誕生』ですし!

さて、そんな様々なイベントの感想を少しずつ。

まず、池田重子先生の「日本のおしゃれ展」。池田先生は昭和始めの裕福なご家庭出身のお嬢様で、最上級の着物を浴びるように見て・着て・触ってお育ちになった方。その後ご自身で明治以降の着物、帯、帯留め、半衿など着物周りのあらゆるものたちのコレクションを始め、恐らく現在日本一のコレクターなのでは?
着物に関する著書も多く、これまでにも何回も先生の着物コーディネートを紹介する「おしゃれ展」が開かれています。今回はその集大成との位置づけで、先生のコーディネートの粋を見ることが出来ました。
その感想は‥実はまだここに書くことが出来ません。と言うのも、私がまだまだその深い内容を消化出来ていないからなんですね。‥いや、もしかしたら、これは一生かかって消化すべきものなのかも知れない、と思うほど、先生のコーディネートは素晴らしかったのでした。気高く誇り高く教養あふれていながら、ちっとも難しくなく、華やかで美しい。先生の域に少しでも近づけるよう、女の着物道に励みたいと思うのでありました。
  
          *

そしてこの「おしゃれ展」の関連イベントとして、先生が小宮悦子さん、IKKOさんとのトークショーを開催。着物の人しか参加出来ないというドレスコードの中、150名全員着物!という熱気あふれる会場へ。
IKKOさんは初めて本物を見ましたが、テレビと全然印象が違ってびっくり。テレビや雑誌で見る限り、押し出しの強い派手~な方かと思いきや、何だか今にも折れそう、或いは消えてしまいそうなはかない印象の方でした。おそらく心がとても繊細な方のようにお見受けしました。
このトークショーで先生から衝撃の発言が出たのでご紹介しましょう!(着物ファン要チェック!!!)
トークショーの最後、質問コーナーで、ある方が、
「私、アンティーク着物が好きで色々な袖丈の着物を集めているのですが、全部が全部自分の襦袢と丈が合う訳ではないので、よく袖からはみ出し気味で着てしまうんです。そうすると、道でさっと知らないおば様が寄って来て、「あなた、襦袢が出てるわよ」と注意されるんですが、やっぱりこういうのはいけないことなんでしょうか?」
それに対する池田先生の答えは、小さなことは気にしなくていいのよ。それよりどんどん好きな着物を着て街に出ましょう!というもの。そして次の発言が飛び出しました。
「私なんかもね、時々出掛けようとすると襦袢と着物の袖が合ってなくて、襦袢の方をホチキスで留めて出かけますのよ」
えーっ!!!い、池田先生がホチキス?????どよめきに包まれる会場。
「そうすると夫がね、お前、もし途中で交通事故にでもあって病院に運ばれたら、池田先生がホチキス!!!って言われるぞ、と言いますのよ。おほほほ」
と微笑まれておりました。
「そうしてホチキスで留めて出かけますとね、後から、あら?何で今日はこんなに腕がちくちくするのかしら?そうだ、ホチキスだからだわ、なんてね。おほほ」
先生、素敵過ぎます!
と、何とも楽しいトークショーだったのでした。

1月はその他に着物イラストレーター松田恵美さんの展覧会へ行き、ご本人や、会場にいらしていたお着物好き洋服デザイナーのリカさんとお友だちになり、着物話に花が咲きました。いつも孤独に着物を着ているので、楽しかった~。松田さんの著書はこんなかんじ↓
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さて、2月は、武蔵大学教授で日本服飾史の第一人者である丸山伸彦教授の公開講座へ。
実はこの丸山先生、母の大学時代の後輩で、小さい頃にお会いしたことがありました。長くなるので細かい経緯は省きますが、私が小5か小4だった夏、若き日の先生のジープの荷台に弟と二人寝転んで、富士から吉祥寺の我が家まで送って頂いたことがあるのです(めちゃ日焼けしました!)。
そんな先生に講義の後お声を掛けると、「えー!」と驚愕。そりゃあそうですよね、子ども時代にお会いしたのが最後ですから。母と丸山先生はその後も三井家に残るひいな形(江戸時代の着物デザイン帳のこと)の共同調査などを行い、親しい研究者仲間。その娘が着物に目覚めたのでありまして、今後も先生の講座などあればちょくちょく顔を出そうと思うのでした。

          *

そして2月は、東京・中井で開かれた染織のイベント「染の小道」にも遊びに行って来ました。
神田川付近の中井や落合、早稲田といった町は、昭和半ばまで「東京染め」と呼ばれる染色の一大拠点でした。その後の着物人口の減少により縮小はしてしまいましたが、今でも染め屋さんや直し屋さん、湯のし屋さんなど、職人さんがどっこい根をおろして着物を作り続けていらっしゃいます。その中井の町の魅力と東京染めの魅力を紹介しようという素晴らしいイベントなのでした。

まずは見て下さい↓
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これは、中井の町を流れる川・妙正寺川の上に反物をさらしている様子です。昭和30年代まで、染め終わった反物を妙正寺川で洗う姿は中井の町の日常風景だったそう。往時をしのび、東京染めの反物が川の上にはためく‥みんな思い思いに立ち止まって、「あれは江戸小紋だね」「あの文様いいね」などとお喋り。何とも楽しい散歩道です。

その他に「染めの小道」では、江戸紅型や東京友禅の工房を見学出来たり、あちこちのお店で和雑貨の販売などもありました。私は絞り染めのハンカチを購入。東京友禅の作家さんと直接お話しすることも出来て大満足。
また、染色作家さんたちが思い思いに新作の暖簾を染めて、期間中、商店街のあちこちの軒先に掛ける「道のギャラリー」という展示もあります。その一例がこちら↓
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実は私の弟が中井に住んでいるので、この日は弟と二人で散策。弟に撮ってもらいました。これは、居酒屋さんの前に掛かっていた暖簾。茂木令子さんという作家さんの渋柿染めです。素敵ですよね~。

楽しかったのは、湯のし工場の見学。湯のしと言うのは、呉服店でお客さんが購入した反物をいよいよ裁つ前に、反物にかけてある糊を除去+幅を真っすぐ整えるために蒸気にかける作業です。いわば、スチームアイロン作業。
こんな裏方の作業を見学出来る機会などめったにありません。私も弟も大興奮で「湯のし石橋」の石橋さんにあれこれ質問しまくって40分ほど見学しました。湯のしの模様はこちら↓
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巨大な湯のし機械に反物をあてがっているところです。うーん面白かった!

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2月はこの他に、人形町の呉服屋さんころもやで開かれたトークショーにも行って来ました。
これは、着物や和に関する執筆の多い文筆家・井嶋ナギさん、皮革で出来た帯や星文様の浴衣など、新しい着物を提案する月影屋デザイナー・重田なつきさん、イラストレーターのコダカナナホさんによる、「かっこいい着物姿」を考察する女子トークショー。
前述の池田重子先生とも共通することなのですが、着物なんて、たかが着物。どうでもいい人にはほーんとどうでもいいこと、ではあるのですが、それをとことんまで突きとめてナンバーワンになってやろうじゃないの!みたいな、着道楽の心意気を感じる内容でした。
お三人が範とするのは、江戸時代の浮世絵に描かれた遊女、芸者、或いは、現代の坂東玉三郎の着姿。私自身はそのような着姿は目指していないものの、実は今頭の中で構想中の着物に関する或る試みの、大きなヒントを頂きました。
いやはや日本中を探せば、目指す着姿は違えど着物に熱い思いを抱いている女子はひそかに脈々と生息しているのでしょう。本音をさらしまくって着物女子トークを繰り広げて頂いたお三人に(保守的着物への悪口とか)、大喝采を送りたくなる一夜でした。
ご一緒したイラストレーターの茶谷怜花さん、画家の江津匡士さんご夫妻、ありがとうございました!!

         *

そして昨日は、吉祥寺の悉皆屋さん・あもで、鹿毛引きの体験講座を受けて来ました。悉皆屋さんというのは着物の洗い張り、シミ抜き、丈直しなどあらゆることに対応してくれるお店のことで、我が家では、着物は吉祥寺のふじやさんで買い、悉皆はあもに出すことにしています。
鹿毛引きというのは、鹿の毛で作った筆で細い線を描いて行く染色法のことで、この技法専門の伝統工芸士さんもいるのだそう。昨日は作家・安治郎さんの指導のもと、半衿生地に鹿毛引き体験。世界で一枚、“自分だけの半衿”を作りました!どの着物と合わせようか、わくわくと悩んでいます。

‥と、凝り性の私は日々着物街道を爆走中です。今後は、昨日の鹿毛引き体験のように、染めや織りを一日体験出来る講座に多く通うつもり。ただ着物を着るだけではなく、一枚一枚の着物がどこからどんな道を通って私たちのもとへやって来るのか、理解出来る人間になりたいのです!

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