西端真矢

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さよなら、MAYA from West End 2011/06/23



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まだ会社勤めをしていた10年ほど前、その仕事がどうしても好きになれなくて、逃げるように別の世界を求めて写真を撮るようになった。と言っても撮った写真を誰に見せる訳でもなく、ただひたすら撮りだめているだけの日々が続いていたのだが。
やがて、最初は50mm1本しかなかったレンズが2本になり3本になり、フィルムの種類もあれこれと試して好みのものが見つかり、ラボにも足を運ぶようになってプリントの焼き色にリクエストを出すようになった頃――およそ4年ほどの時間が過ぎていた――ふと、mixiのフォトアルバムに撮りだめた写真のごく一部を載せてみようと思い立った。すると、非常に大きな反響があり、また、或るフリーペーパーの編集者から写真を使いたいという連絡まで頂くことになった。そのときに自分につけた名前がMAYA from West Endだった。

当時私が勤めていた会社では、副業が禁じられていた。だから、いくらマイナーなフリーペーパーとは言え、会社の人の目に触れるかも知れない場所に本名が載ることはどうしても避けたかった。そこで何か別の名前を考えなければならなくなった訳だが、「どうせたまたま声がかかっただけの一回限りのことだから、何かしゃれの利いた名前にしてみよう」と考えた。そのときにMAYA from West Endという名前がふと頭に浮かんだのだった。

          *

この名前は、私の本名を苦笑するほど素直に英語へと直訳したものだ。例えばアーティストの山川冬樹さんの名前を直訳したら、“Mountain river Winter tree”になる。そういうばかばかしさを狙おうと思ったのだ。
また、実はそれだけではなく、裏にはちょっとした主義主張もあって、それは、私が「極東」という言葉が大嫌いだったことに由来している。
そう、初めて「極東」という言葉を知った小学生の頃から、私はいつもこの言葉に納得が行かなかった。
「地球は丸いのに、どうして日本は“東の涯”だって決めつけてしまんだろう?例えばアメリカ大陸の人から見たら、日本は西の涯の国だよね。どうしてそうやって何でもかんでもヨーロッパ中心で考えるんだろう?」
そう思っていた。だから私は敢えて「西の涯から来たマヤ」=「MAYA from West End」と名乗ろうと思ったのだ。

          *

さて、そんな風にしてこの名前で写真をフリーペーパーに発表した後、画数が良かったのか(笑)、一回だけのはずだった当初の目論見は外れ、次々と写真の仕事が舞い込むようになった。そうなると、途中で名前を変える訳にはいかなくなる。私にとって、公に発表する写真は一枚一枚が愛情のこもった大切な作品だったから、見る人に、「この前Aの雑誌で見たあの写真と、このBのサイトに乗ってる写真は同じ人が撮ってるんだ」としっかり認識してもらいたかった。そうやって、私の意図や私の作風が一貫して伝わることが私の心からの望みだった。だから、名前を変える訳には行かないのだけれど、時間が経つにつれて困ったことにこの名前が嫌で嫌でたまらなくなってしまっていた‥。

一つには、MAYA from West Endという名前が英語であることが気に食わなかった。私は昔からアジア文化好きで日本文化好きで更にかなり漢字フェチな人間なのに、何だってこんな英語の名前をつけてしまったのだろう?
また、名前があまりにも突飛なために、出版社などに電話をしたときにちゃんと名乗っているにも関わらず、必ず「もう一度お願いします?」と訊き返されるのが嫌だった。こういうことは、毎回毎回続くとだんだん気が滅入って来るものだ。
また、そもそも全体の文字数も長過ぎて、他の人と名前が並んだときにバランスが悪いのがみっともない。もう、何もかもが嫌になっていた。

          *

そんな中、2008年に、私が書いた文章作品に音楽や映像をつけて、朗読家が朗読をする、という朗読イベントを行うことになった。そのときに、
「文章作品を発表するときだけは、日本語で書いているのだし、やはりどうしても日本語の名前にしたい」
と、文章活動向けに新しい名前を考えることを思いついた。そのときつけたのが「西端真矢」という名前で、「にしはたまや」と読む。これは、また英語へと激直訳すれば「MAYA from West End」になる訳で一貫性があるし、実は、中国語が分かる人が深読みすれば、或る意味が浮かび上がって来るような仕掛けも施してある。(分かった人はご連絡下さい)
この名前はとても気に入っていて、しかしその後文章仕事の依頼は全く頂かず写真の仕事だけを頂いていたので、MAYA from West Endの名前もそのまま使い続けることになった。
けれど、私の内面にも変化があって、今、これまでMAYA from West Endの名前で撮り続けて来た多くの被写体に興味を失っている。そしてそんな私の興味の変化と不思議に足並みを揃えるように、去年から文章仕事の依頼が少しずつ増えて来た。それに関しては私の中にもたくさんのアイディアがあって、いっそう力を入れて行きたいと思っている。
もちろん、写真を通して表現したいアイディアも幾つか残っている。特に「伝統日本文化への憧憬」というテーマを伝えられるような写真を撮って行きたいという思いは強くあり、写真の活動はこれからも続けて行くつもりだ。けれど、活動の中心は文章になり、また、撮り続けたい写真も日本文化に関わるものが多くなることを考えると、MAYA from West Endという名前を持つ必然性はもう何もなくなってしまっていると思うようになった。
そこで、今日限りでMAYA from West Endの名前は廃止して、今後は西端真矢の名前一本で、文章と写真、両方の活動を行って行きたいと思う。また、それに伴い今日からホームページのデザインも一新したので、お時間の許す方はトップページなどを見に行って頂けたら大変嬉しい。
現在、紫陽花の花を撮った写真を掲げているが、今後も季節ごとの花を撮影した写真(それも、自然に咲いている状態ではなく生け花作品にしたものを中心に)を掲載して行く予定なので、時々、「今はどんな花がトップに来ているかな?」と、楽しんで頂けたらと思う。

‥という訳で、本日より、MAYA from West Endというアーティストはこの世から消滅しました。今後は西端真矢を、どうぞご愛顧末永くお願い申し上げます!

(上の画像は、MAYA from West End、西端真矢、それぞれの実印を押印したもの。左の実印から右の実印へと変わりました!)

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