西端真矢

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スター 芸能界で生きるということ 2012/03/06



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最近芸能ニュースをにぎわせている或る女優さんと、7、8年前、まだ広告代理店に勤めていた頃にお仕事をしたことがある。この「にぎわせている」というのは思いやりある言い方で、実際には「今、悪い評判を取っている」と言うのが正しい女優さんだ。

私がお会いした当時の彼女はまだ芸能界に頭角を現し始めたばかりで、私が担当していた或る商品のCMに起用しようかという話が持ち上がっていた。かなり大型商品だったこともあって、衣装なども用意してオーディション形式でクライアントと会って頂くことになり、その準備の過程で彼女と何回かお会いすることになった。
結局そのCMでは、「まだどこか華がない」というぼんやりとした理由で別の新進女優を起用することになり、彼女が選ばれることはなかったのだけれど、まだ二十歳そこそこにも関わらず落ち着いて自分の意見を述べ、スタッフにも礼儀正しい、聡明な女の子という印象だった。
その彼女が今、多くの人々を失望させ、また困惑させている。その様子を見ていると、芸能界という世界の底知れぬ恐ろしさを感じずにはいられない。

芸能界では、「注目」という地域通貨と引き換えに、こちら側の世界で桁違いの金銭や優待手に入れることが出来る。二十歳そこそこの女の子がその力に幻惑され、落ち着きを失ってしまうのは当然だとも言えるだろう。
けれどその「注目」は、私が関わったオーディションで彼女が落とされてしまった時のように、ほんの少しの運命の匙加減で、やって来たりまた飛び去って行ったりする。代償に得るものの力が大きければ大きいほど、そのしびれるようなギャンブルの感覚は強まって行くのだろう。
そして、一旦「注目」が彼女のもとへやって来た後には、まるで影が本体を凌駕して行くように、「注目」の世界の中の彼女の像が圧倒的な命を持ち始める。影と体は決して一つになることは出来ない。光が強ければ強いほど、その乖離の感覚も強まるのだろうと想像出来る。それを持ちこたえるために、強い反対力が必要になることもあるのだろう。そして彼女は「壊れた」行動を取り始めることになる。
彼女はこれからどこへ向かって行くのだろう?
光の中で傷を負いながら、ぎこちなく歩く美しい横顔を限りない同情を持って見守っている。同情などという言葉を聞いたらもちろん彼女は、ふん、何言ってるのよと笑うのだろうけれど。

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