西端真矢

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【動画付き!】江戸着物ファッションショーを振り返って思うこと 2013/09/18



今年7月、私が企画・制作して行った江戸着物ファッションショー。
お蔭様で大好評のうちに幕を閉じ、「またやって下さいね!」という声もちらほら頂いていて嬉しい限りです。
先日は、雑誌『隔月刊 装道』でも、当日の着装を6ページにもわたり大々的に採り上げて頂きました(下の写真参照。動画は更に下で出て来ますのでお間違いなきようご注意下さい)↓
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そんな江戸着物ファッションショーの様子を、当日お仕事などでご来場頂けなかった方、また、今になって初めて江戸着物ファッションショーの情報を知った方にも少しでも体験して頂きたいと思い、5分ほどのPV映像にまとめました。もちろん、当日会場にお出で頂いた方には、現場の臨場感をなつかしく思い出して頂ければと思います。
このPV映像は、数々の劇場映画やミュージックビデオの制作・撮影・編集を手掛ける信田眞宏さんと大江利哉さんのご協力により制作頂いたものです。とてもかっこよく仕上がって頂いて感無量。今日からyoutubeで公開しましたので、皆様、下のplayボタンをクリックして、ゼヒご覧になって下さい!

この映像を見て頂くとお分かり頂ける通り、江戸着物ファッションショーは、道明三保子先生による“江戸着物ナビゲーション”講義と、着装モデルによるショー。二つのプログラムが交互に現れるスタイルを取っています。
このような構成に関して、少し話は変わりますが、実は、準備を始動した当初、資金や技術のお願いに回っている際によく言われた“二大アドバイス”がありました。

「講義なんていらないんじゃない?勉強的な小難しい話なんて、誰も聞こうとしないと思うな。それよりも、江戸着物を着たモデルを一人でも多く増やして、ショーをバーンと華やかにした方がいいよ」

「江戸着物の再現はそんなにしゃかりきになって追求しなくても平気なんじゃないかな?そこをちゃんとしようとすると途方もない労力とお金がかかるでしょ。今回はあなたにとって初めての“自分で運営するイベント”なんだから、まずはそこそこの再現でいいじゃない」

こんなアドバイスをあちこちで頂いたのです。
表面上はにこにこありがたくお話をうかがっている風を装っていましたが、実は内心では全く納得していませんでした。
私は、専門家による解説は、絶対に不可欠だと考えていました。
もしも解説がなく、ただ再現着装があるだけなら、結局は「今日古い着物を見た~」で終わってしまう。それは「今日珍しい金魚を見た」と同じレベルで、娯楽情報がこれほど氾濫する時代には、一瞬のうちに脳の中で消費されてしまうだけと思えたのです。
江戸着物ファッションショーの準備のために様々な情報を集めている中で知ったのは、全国の市町村で、「こんなにもたくさんの時代行列イベントが行われているんだ!」という事実でした。また、テレビを点ければ昔より減ったとは言え、一日一つくらいは時代劇を観ることだって出来ます。それでも、これらの出演者が着ている着物は、ただ“昔の着物”というぼんやりとした情報でしか人々の頭の中に残らない。戦国時代の着物と江戸時代の着物では全く違うことが多々あるのに、何が違うのか、どういう美意識で着ていたのか、何がおしゃれポイントだったのか‥そんな楽しい情報は全て霧の中に埋もれたまま。だからこそ、絶対に解説は外せない!と確信していました。

また、「今回が初めての試みなんだから、大体の再現でいいじゃない」という二つ目の意見。これも私には絶対受け入れられないものでした。
もちろん、どうしても出来ない部分も出て来るだろうし、そもそも江戸時代の流行について当時の人が書いた文献を当たっても、文献甲と文献乙では見解が違っている事柄もあります。タイムスリップでもしない限り、当時を完璧に再現するのは不可能なこと‥ということは、企画を動かす前から分かっていました。

でも、だからと言って、最初から「大体でいいじゃない」というのではあまりにも志が低過ぎる。
それにハッキリ言ってこの数年、“自分解釈の”“今の要素も取り入れた”、“なんちゃって江戸着物”は、もう世の中にあふれ過ぎていて全然新しくも何ともないと感じていました。やろうと思えば誰でも今日から、“江戸時代アレンジ着物”を楽しむことは出来ます。
むしろあらゆる努力をして当時を再現し、その立体的な臨場感を体で感じる。その上で、新しい目で浮世絵などの資料を見て、我々の祖先の美意識をじっくりと咀嚼する。その咀嚼と、グローバル時代の今を生き抜く中で自然に身に着けている現代の美意識。二つの混交を経て、今を生きる私たちならではの新しい美の感覚が生み出されるはずだ。そんな道行きの方が、私にははるかに刺激的に思えたのです。

             *

もちろん、そのための準備は、本当に血反吐を吐くような苦しいものでした。
日本全国のアンティーク商や美術館、工房に連絡を取って、多くの所にはけんもほろろに断られ‥「全部で三体しか再現出来ないのではないか」と追い詰められていた時期は、夜も眠れないこともありました。そして、資金面で行き詰まっていた時期も、やはり眠れない夜を何度か過ごしました。
「江戸時代の着物を再現したーい」と口で言うのは簡単です。でも、何かを成し遂げるためには必ず資金が必要であり、その仕組みをどう作り上げるのか。ただの“着物好きの女の子たち”が投げ出してしまうこの一点を突破するための試行錯誤とその苦しさは、やってみた人にしか分からない、まあ、寿命が縮むような苦しいものだと断言します。
それでも、少しずつ、理解を示して下さる方々と出会え、2時間という、初めに決めていた時間枠を十分に楽しんで頂ける、八体の着装を再現することが出来たのでした。

もちろん、まだまだ完璧でない部分は幾つかありました。
あそこにはもう一つあの小物を加えたかった‥。あの帯は本当は草木染めのもので揃えたかった‥などなど、どうしても力及ばなかった部分も存在しますし、そもそも江戸時代の既婚者は本当はお歯黒をしているはずですが、今回は、江戸時代の美意識のうちでも“現代にも通じやすい美”の部分に最もクローズアップしたかったので、「不気味~!」と取ってしまう方が多そうな要素は敢えて避けた、という側面もあります。また、私の勘違いで、小さな間違いを犯しているところもあると思います。その点はどんどんご指摘を頂き、その結果を次に反映して行きたいと思っています。

          *

以前、養老孟司先生のインタビューを拝読した際、先生の或るお話に大変感銘を受けました。先生は大体このようなことを仰っていたと記憶することを、以下に再構成してみますのでご一読ください。
「僕は、東大で成績をつける際、こんな基準を用いています。
僕が課題を投げかけた時に、まず一番に手を挙げて意見を言った学生。この学生には無条件でAの評価を与えます。たとえその意見が幼稚なものだったとしても、です。
その後、最初の発言者の荒削りな意見を様子見して、おもむろに手を挙げ、より洗練された見解を述べる学生たち。例えその意見がより正しく洗練されたものだったとしても、僕の評価はBです。時々、このような評価を見て僕に文句を言って来る学生がいますが、そういう人は、誰も先人がいない中で最初に考え、発言する時に必要とされる創意と勇気。その重要性を理解していない」

私は養老先生のこの意見に大変感銘を受けました。
私自身も、後から安全でスマートなものを提出する人間であるよりは、誰もやっていないことを最初に思いつき、勇気を持って世の中に問いかける人間でありたいと思います。また、初めから、「まあ、大体こんなところでいいんじゃない?」と低く目標を設定するのではなく、可能な限り最高のものを追求する人間でもありたい。そうも願っています。
その上で、一方、こんなことも思うのです。

私の父方の祖父は学者で、父も母も学者です。学者の家で育った人間だからこそ実感として思うことは、学問上の定説は常に進化、或いは変化し続けて行くものである。そういう厳とした事実です。
最初に誰かが新しい学説を打ち立て、他の学者がそれに衝撃を受ける。そして或る一つの分野の研究が盛んになる。すると、最初に提出された学説の誤った部分が発見され、大小の修正が加えられる。一見、最初の学説は古びた、価値のないものに成り下がったように見えるかも知れませんが、しかし、そもそもそのような修正を行うことが出来たのも、最初に新しいものの見方が提出されたからこそであり、人類の知見はそのように道筋でしか進化し得ないものなのではないでしょうか。

残念ながら着物文化はこれまで徐々に縮小の道をたどり続け、私たちの先祖が持っていた独自の美意識は、ファストファッション、或いは洋服の美意識に塗りつぶされようとしています。過去の美意識を探求することは、もはや学問の領域に近くなってしまったと言っても良いのではないでしょうか。
けれど、同時に、“着飾る”ことは、石器時代からおそらく変わらない(貝殻で作ったアクセサリーなどが発見されますよね)、俗っぽい、人間の生活に根差した最も根源的な娯楽の一つでもあるとも思います。
着物を愛し、同時に、学ぶことを愛する人間の一人として、これからも、誤りを恐れず、しかし目標は常に高く置いて、過去の美意識を探りながら新しい美意識を産み出す、そんな「温故知新の道」を追求したいと思います。その道は単に服飾の領域にとどまることを越えて、自分の育ったこの国の文化を愛し、誇りを持つことにつながる道だと確信しています。
幸いにも、複数の団体様から、「またあなたの企画で時代着物イベントをやってみませんか」というご提案を頂いています。今すぐという訳ではありませんが、また必ず新しい企画を皆様にお届けする日が来るよう、資金・技術・知識、全ての面での厳しい努力を続けて行きたいと思っています。

江戸着物ファッションショーに、技術協力、服飾貸与協力、資金協力、宣伝協力、人脈のご紹介の協力をたまわった全ての皆様。当日会場にいらして下さった皆様。応援を頂いた皆様。そして、新しくこのような企画に興味を持って下さった皆様に、心からの感謝を捧げます。そして、これからも応援をたまわれる自分であるよう、精進を続けてまいりますので、変わらぬご贔屓をどうぞ何卒よろしくお願い申し上げます!


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夏の思い出、絽のコーディネート二つ 2013/09/12



 久し振りにお着物日記です。
 今日、東京は30度を記録しましたが、それでも朝夕は風も涼しく、秋の気配が感じられて来ました。私はとても暑さに強く汗もかかない体質なので、もう夏の薄物は店じまい。単衣に移行して過ごしています。
 そこで、今日のお着物日記では、夏を振り返り二つのコーディネートをご紹介したいと思います。実は今年の夏は仕事が忙し過ぎて、あまり遊びに出かけることが出来ませんでした。着物や浴衣を着る機会もほとんどなかったのですが‥

 ‥そんな中、一着目は、こちら。絽の小紋のコーディネートです。
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*画像では分かりにくいかも知れませんが、灰味がかかった白に、小さく昼顔の花が型染めされている小紋です。

*合わせている帯は、京都・ひなやの組帯。組帯というのは、機で織るのではなく、複数の人が糸の先を持って組みながら形にしていくのだそうです。そこからやや羅にも似たゆるやかさが生まれ、春~秋の始めに締めるのに適しています。洒落袋で作っています。

*帯留めは、白の三分紐に珊瑚の帯留め。と或る日本料亭でのお食事会の日に着て行きました。何だかちょっと女将っぽく見えてませんでしょうか‥!

           *

そして、二着目は、お仕事の撮影の日に着て行ったコーディネートです。
と或る日、着物雑誌の撮影で、早朝から素敵な日本庭園のある都内某所へ。私が撮影された訳ではなくモデルさんの撮影だったのですが、この日は編集ではなくライターの立場に専念することが分かっていたので、現場で動き回ったりものを運んだりすることも少ない。着物で向かいました。
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*着物は、紺の絽。墨流しのような文様が全体に入っています。

*とても地味なこのお着物は、実は、頂きもの。幼稚園の!同級生のおばあ様愛用のお着物だったのですが、おばあ様亡き後、誰もサイズが合う人がなく、着る人がいない‥ということで、身長152cmの私の出番となりました。

*着物だけ単体で見れば、今の私にはひどく地味なこの着物。そこで、帯は、華やかに唐草などが織り込まれた博多帯を合わせています。

*帯締めは白の平組ですっきりと。帯揚げは薄紫色の縮緬地に紫の楓の絞りが入った一枚を少しだけ覗かせるよう着付けました。

              *

 実は今日も着物で打ち合わせに出かけたのですが、単衣のコーディネートはまた別の機会にご紹介したいと思います。
 私自身は、上でも書きましたように暑さに強い頑健体質なので単衣で出歩いていますが、汗かきの方や暑さに弱い方は、30度もあるのですから、9月半ばと言っても、無理に単衣にする必要は全くないと思います。
 着物を着ることが苦行になるのは最悪。
 そもそも現在「~の節句」と祝っている行事も、新暦に合わせていることがほとんど。本来は旧暦に祝っていたのですから、1か月ほど後のことなのですよね。
 西洋諸国に追いつこうと焦りまくった明治の政治家が決めた暦の約束に、無理やり体を合わせる必要は全くないと思います。そして更に、明治の頃と今とではだいぶ気温が違って来ているのですから‥。肌や内臓が楽なスタイルで、着物を楽しんで行きたいですよね!


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【ちょっと近況】私のyoutube語学学習法 2013/09/11



 怒涛の撮影週間が終わり、これからしばらくはひたすら家で原稿を書く日々が続きます。
 忙しいことは忙しいけれど移動時間は減るので、しばらく休んでいた語学学習を再開しよう!とやる気満々です。

‥と言っても、youtubeで自分の学びたい語学の様々な映像を渉猟するだけなのですが‥、でも、この勉強法、リスニング力を上げるのに非常に有効なので、皆さんもゼヒ試してみて下さいね。
 ちなみに私は今日、金城武さんのインタビュー(字幕なし)を見ました。大体全部聞き取れたかな。

              *

 今日は字幕なしでしたが、勉強のためには本当は字幕付きの方が良いと思います。
 もちろん、日本語訳ではなく、画面で話されている言葉をそのままただ字幕に落としたものを探すことがコツ。
 基本、字幕は見ずに流し聞き。2回目に、1回目に見た時に分からなかった表現のところで止めて、字幕をチェック‥というやり方が良いと思います。
飛躍的にリスニング力が上がりますよ!

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私はどうも英語が好きになれず、あまり得意ではないのですが、そうも言っていられない場面も増えそうなので、これからは中国語に加え、英語の勉強も始めようと思います。ふ~。


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「季刊きもの」誌で私のきもの生活を紹介して頂きました 2013/09/08



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 「季刊きもの」193 秋号で、私の着物生活をご紹介頂きました。
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 皆さんは、繊研新聞という新聞をご存知でしょうか?
 アパレル業界の老舗専門紙で、パリコレの速報から新しい繊維の開発情報、小売店の四半期ごとの売上速報など、布地や服、いわゆる糸偏(いとへん)業界のニュースを毎日発信している業界新聞です。
 「季刊きもの」は、その繊研新聞が発行するきもの専門雑誌。ふだんは呉服業界で働く方たちに向けた情報が載っているのですが、時に一般の方に向けた特別号を発刊することがあり、今号がそれに当たります。
 大御所着物スタイリスト大久保信子さんのインタビュー、きくちいまさんと秋月夕子さんの対談、目白の人気着物店・花想容のオーナー中野さんのインタビューなどなど、錚々たる顔ぶれがご登場になっている中、私は「きものライフスタイリスト」というページで、呉服業界の人間ではないけれど着物を愛してふだんの生活に取り入れて暮らしている人々‥の一人として2ページにわたりご紹介頂いています。

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 当日着た着物はと言うと、上の写真で何となくお分かり頂けるでしょうか、祖母が染めた土器色(かわらけいろ)の丸紋つなぎの単衣に、破れ七宝の八寸帯を締めています。
 本当はここでそのコーディネートを大々的に載せたいところなのですが、そこはやはり本誌を手に取って見て頂けたらと思います。
 それにしもて、前々回の日記でお知らせした「美しいキモノ」に続き、祖母の着物を広くご披露出来たことが嬉しく、また、江戸着物ファッションショーのことや私のきものへの愛!について深く掘り下げてインタビュー頂け、大きな励みになりました。ますますきものにまつわるあらゆることを吸収し、そして、アウトプットもして行きたい、と思いを新たにしています。

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 そう言えば、この日の写真は、いつも私が親しく出入りさせて頂いている新宿のシェアオフィス・HAPONで撮影しました。
 HAPONには「富士の間」という、富士山の絵を壁に描いた畳敷きのミーティングルームがあって、右ページの大きなメイン写真はそこで撮影しています。
 大好きな着物と、気のおけない友人たちの経営するオフィス。思い出の記事となりましたので、皆様も良かったら書店で手を取って頂けたらと思います!

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