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全日程きもので回った倉敷・岡山四日間の旅(前篇)~~きもの好きの方も、旅好きの方もお楽しみください! 2014/03/16
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先々週、倉敷と岡山を回る四日間の旅をして来ました。
その全日程を、今回洋服は一枚も持たず、きものだけで過ごしました。
ふだんからきものを着るすことの多い私ですが、“きものだけの旅”は初めての経験。実践してみて初めて気づいた失敗点や改善策もご紹介しながら、四日間・四通りのコーディネートを、2回に分けてお届けしたいと思います。
もちろん、旅日記ですから、きものだけではなく、倉敷と岡山の素敵スポットもたっぷりご紹介。きもの好きの方にも旅好きの方にも、お楽しみ頂けたらと思います!
美しい、倉敷の町
さて、あれこれ言葉をつらねる前に、まずは写真を一枚。
美しい、倉敷の風景です。
太平洋戦争の空襲を免れ、その後の高度成長期の開発ラッシュも免れ、この町並みが残っていることに、守って来た倉敷市民の方々に、しみじみと感謝。
上の写真は最も有名なお堀周りの風景ですが、他にもそこかしこに美しい町並みが広がっています↓
また、この週は週初めに雛祭りがあったため、倉敷を挙げて「倉敷ひなめぐり」というイベントを開催中。例えば道端にこんな雛飾りがしつらえてあったり↓
↑こんな風に、町中のほとんどの店に雛人形が飾ってあって、観光立国ならぬ“観光立町・倉敷”として、町全体が強くまとまっていることを感じました。
きもの旅、一日目のコーディネート
さて、冒頭でも書いた通り、今回四日間の旅を、総てきもので通しました。
持って行ったのは、きもの三枚に、帯三本。帯締め四本に、帯揚げは一本。草履と下駄を一足ずつ‥というラインナップです。
今回の旅で難しかったのは、カジュアルとフォーマルのシチュエーションが混在していることでした。実は数年前から、父が仕事で倉敷と関わりを持つようになり、今回も、父の出張に同行する形での旅だったのですが、目上の方々との料亭でのお食事会の予定があるかと思えば、一日町を歩き回る日もあり、しかも、外国人留学生の方にお茶の基本を(僭越ながら)お教えするというミッションもあって‥きものの選定にはかなり迷うことになりました。
そんな中、初日に選んだのはこんなコーディネートです。
細かい格子文様の紬に、祖母が染めた塩瀬の型染め帯。“花籠につばめ”の柄で、春を先取りする気持ちで締めてみました。所謂「織りのきものに染めの帯」の王道コーディネートです。履物は、下駄を履いています。
こうして写真で見ると、私がどうこうではなく、やはり、和の町並みにはきものがしっくり来ることをしみじみ感じますよね。何と言うのでしょう、倉敷の町を歩いていると、きもの姿は完全に勝ち組です!皆さんにも、ゼヒ、倉敷や京都、金沢などの古都にはきもの姿で出かけて頂きたいと思います。
きものの旅失敗点‥長い交通路線にお太鼓帯はつらい!
ところで、実は行きの新幹線では、縫物をしておりました!
知り合いから頂いた、お母様のものだったという襦袢。袖が短いので丈出しをしなければならず、「そうだ、正に新幹線での移動中がピッタリだわ!」と持って行ったのでした。
平日の新幹線、背広姿でタブレットを操るサラリーマンに囲まれながら、きもので縫物の私。皆様を混乱に陥れていたことは間違いありません‥w
‥と、そんなことは良いとして、東京から岡山までは新幹線で3時間。これをお太鼓帯で過ごすのは厳しいです。
お太鼓結びにするということは、要するに、椅子の背に当たる面積は横18センチ×縦8センチの帯枕部分のみ。これだけでの小さな面積で、しかも厚みが3センチほどあって腰から枕までの部分の背中が浮く状態で、3時間、上半身の全体重を支えるのは非常に非常に無理があります。そのことを、今回、体験してみて初めて実感しました。
やはり、1時間を超える移動には、半幅帯がベストだと思います。その上で、駅なりホテルなりに着いたら名古屋帯に変える。半幅を持って来なかったことを心から後悔しました。
もちろん、名古屋帯でも、ぐぐぐっと前に回してしまうという手もあるのですが‥急に江戸時代のおかみさんみたいな結び方をするのも、ね‥ということで、次からは、長旅の場合には必ず半幅を持参したいと思います!
夕食は味噌カツを
この日、午後に倉敷に着いた後は、町を散歩したりかわいい雑貨屋さんを覗いたりして過ごしました。その散歩の成果が冒頭の町並み写真という訳です。
そして、夜は、実はこの日は父が仕事の食事会があったため、私は一人で食べることに。実は外で一人で夕食を取ることが非常に苦手なので(それで一人旅も全くしません‥と言うか、出来ない)、ホテルの部屋でルームサービスでも取ろうかとも思ったのですが、ガイドブックで見た“梅の木”という味噌カツ定食屋さんがとても美味しそうだったので、早めの人が少ない時間を狙って食してまいりました↓
実は、味噌カツを食べるのは生まれて初めてでしたが、薄く微粒子の衣に、自家製味噌。美味ですね!
二日目のきものコーディネート
さて、倉敷の旅、二日目のコーディネートははんなり風にまとめました。
桃色地に藤色などを淡くぼかした、てろっとしたやわらかもののきものに、一日目と同じ染め帯を合わせています。
帯の模様のアップがこちら↓
二日間のコーディネート、同じ帯でも、合わせるきものが紬とやわらかものと変わることで、やはり大きく印象が変わることをご実感頂けたのではないかと思います(自分でも実感しました!)。
江戸時代の豪商の邸を訪ねて
上のきもの写真を撮ったのは、倉敷から車で30分程の距離に位置する、児島という町の、「野崎邸」という史跡(国指定重文)のお庭です。
野崎家は、江戸時代から塩業を営み、岡山地方一体で一番と言っていいほどの財を築いた豪商。藩から名字帯刀も許されており、度々その池田の殿様が、この家を訪れていたということです。今回、その野崎家の現ご当主に邸内を案内して頂きながら参観致しました。
さて、そんな豪商のお庭がどんなものかと言うと、例えば邸内には神社があったり↓
(塩業を営む家なので、“塩竈神社”です!)
もちろん、茶室もありました(こちらの茶室の他にもう一つありました)↓
↑そして、家財を入れておく蔵もこんなに立ち並んでいるのですから、その羽振りの良さが分かるというものですよね。
今回、雛祭りの季節ということで、倉敷と連動して、児島の野崎邸の所々にも、代々野崎家が所有して来たお雛様が飾られていました。これは、江戸時代の享保雛です↓
また、上の写真でご紹介した蔵の一つが展示室にもなっており、その中に“見栄っ張り雛”という面白い雛もありました↓
これは、山陽地方独特の雛だということで、衣装を見せびらかすためにわざと袖の部分が前を向いている、という独特の様式をしています。それを土地の人自ら“見栄っ張り”と呼ぶなんて、洒落が効いていますよね。
昭和時代の様々なお雛様が集合!お雛同窓会
この野崎邸には、明治期に建てられた別館もあり、そこは、謂わば迎賓館。明治維新後、華族院議員となった野崎家当主が、お客様をお迎えするためのゲストハウスがだったそうなのですが、そこで、
「お雛同窓会」という雛祭り展示が開かれていたので、拝見に伺いました。
じゃーん、見て下さい。百畳敷きの野崎家別邸の大広間に、周辺のお宅から提供されたお雛様の数々。昭和初期から平成までの、世相を反映した様々なお雛様が飾られていて圧巻でした(もしかしたら大正期のお雛様もあるかもしれません)。
そんなお雛飾りと記念撮影↓
私の右後ろに見えるお雛様の最上段に、御殿があるのが見えるでしょうか?これは、“御殿雛”と言って、戦前頃までよく見られたものだったそうです。
そもそもお雛様とは、公家のお姫様とその周りの人々、そして婚礼丁度を写したものですから、お姫様の住居である御殿もミニチュア化されていたんですね。それがいつしか作られなくなって、今のお雛様の形になったのだそうです。
また、面白いのは、昭和三十年代のこんなお道具↓
時代は高度成長期。「三種の神器」として、テレビ・冷蔵庫・洗濯機を日本中の人々がこぞって揃えようと張り切っていた時代でしたが、そんな世相を反映してか、お雛様にもテレビと、そしてミシンが!漆塗りのテレビなんて、豪華で家にほしいくらいです。
そうそう、市松人形も多数展示されていました↓
‥と、豪華で楽しいお雛同窓会なのでした。
世界のブランド“倉敷ジーンズ”
ところで、ファッション好きの方なら、倉敷が日本が誇るプレミアム・ジーンズの土地だと、ご存知のことと思います。
もともと岡山は、江戸時代以来“備後絣”という木綿織物が盛んでした。その特技を活かして、戦後はジーンズ作りに取り組み、“倉敷ジーンズ”として有名になったということです。
そんな倉敷ジーンズの多くは、実は、児島で作られています。中でも、“桃太郎ジーンズ”は最高級ジーンズとして世界的に有名。あのサッカーのベッカム選手も、来日するとわざわざこの児島の本店に買いに来るのだそうです。
そして、その本店というのが、実はこの野崎邸の真向いにあり、更に工房を併設しているとのことで、見学させてもらいました。
こんな風に藍玉から藍を建てて↓
木綿糸を染めて↓
何と手織り機(はた)で織った最高級ジーンズがあるのです!↓
手織りのジーンズ!初めて聞きましたし、ジーンズを織っている手織り機も初めて見ました。そしてお値段を伺うと‥何と、17万円!!!きっとベッカムが買ったのもこのジーンズなのでしょうね。
布好きの私、大興奮のひと時でありました。
瀬戸内海と、倉敷の料亭
さて、この日、お昼はせとうち児島ホテル9階の展望レストラン“ポール・ブラン”で頂きました。瀬戸内海で採れる食材を頂きながら眺める、絶景の瀬戸内海が下の写真。ぽこぽこと点在する島。おだやかな海。心休まる美しい風景です。
この日、午後遅くには倉敷に戻り、夜は、岡山の方々との、と或るお食事会に。倉敷の料亭旅館“御園”で頂きました↓
私は人との会食中に写真を撮ることがどうもあまり好きになれないので、お料理の写真はなしでごめんなさい。岡山は、海も山も川もあり、「晴れの国」と言われるほど日照の良い土地柄。そんな素晴らしい環境で育まれた食材を、繊細な味付けで頂ける「御園」に、倉敷に行かれたらゼヒ足を運ばれてみてください。
食事の後は、夜の倉敷を散歩するのも楽しい!白壁の美しい町並みは夜もまた美しく、人影もぐっと少ないので、時代小説好きの方なら江戸時代の夜を歩いている気分にひたれます。長い白壁に揺れる柳の影、きらりと光る蒔絵のかんざし‥などと空想していると一本小説も書けてしまうかも知れません‥
‥いかがでしたでしょうか、“倉敷・岡山きものの旅”前篇。
火曜日に後篇をお届けいたしますので、引き続きお楽しみ頂けたらと思います!