西端真矢

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「美しいキモノ」アカデミー出席の日のきもの 2014/07/24



大分前のことなので恐縮なのですが、今日の日記は、雑誌「美しいキモノ」が開催するきもの講座「美しいキモノアカデミー」に参加した日のコーディネイトをご紹介します。
何せ6月の開催だったので、きものはまだ単衣です。ちょうどこの頃仕事が立て込んでいて、アップデート出来ないまま時間が過ぎてしまったのでした。
当日は、こんなきもので参加しました↓
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きものは、私の祖母が東京紅型の技法で染めたものです。
ちりめんではなく紬地に染めているのがやや珍しいかも知れません。丸紋つなぎ文様を、茶系の同系色で染めていて、祖母の趣味全開!の一枚です。
帯は、もう6月の後半でしたし、絽を締めました。ちなみに襦袢も麻の襦袢を着て、半衿も絽にしていました。帯の文様は、片輪車。絽刺しで表現されています。

このきものは、6月10日の日記で着ていたのと同じものです。
この時は若竹色の帯に黄色の帯締めを合わせていました。やはり帯で大分印象が変わると思います。
http://www.maya-fwe.com/4/000289_J.html

ところで、今回の写真で私と一緒に写っている裃は、小千谷縮で織られています。ものすごく薄いのがお分かり頂けるでしょうか。江戸時代より続く小千谷縮の名門“西脇商店”が所蔵するもので、江戸時代、当主が正装用に作ったものだということ。今はここまで薄い小千谷縮は織ることが出来ないのだそうです。

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この日の講座では、西脇商店の現当主(十一代目)西脇一隆氏から、小千谷縮の歴史を直接学ぶことが出来ました。西脇商店は徳川御三卿の田安徳川家の御用も務めていたということで、貴重な「田安御用」の看板を生で見ることも出来、歴女…特に徳川歴史好きの私は大感激だったのでした!
看板の横にあるのは、西脇商店の縞帳。これも大変貴重なもので、何時間も見ていたい思いでした。

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この日はもう一講座、友禅染めの人間国宝・田島比呂子氏の作風や人柄について学ぶレクチャーも開催されました。その中で田島さんの制作風景を記録したドキュメンタリー映画が上映されたのですが、私がとても感動したのは、田島さんがあまりにも普通で・質素な環境の中で次々と傑作を生み出されていたという事実でした。
人間国宝と言うと、何か非常に立派な工房をお持ちで、広々とした風格ある作業台にばーんと反物を広げて創作に励んでいるような、そんな風景を思い描きがちです。けれど田島さんが住んでいらしたのは、ごく普通のマンション。しかもそれほど広くもないお家のようで、本当にごく普通のリビングルームのようなお部屋の小さな机で、少しずつ少しずつ反物を広げて作品を描かれているのです。
そして、染め物では、描いた後に“水元”と言って反物を洗う作業が必ず入りますが、私たちが染織の教科書でよく見るのは、長いプールのような専門家らしい装置を使って水元を行う姿。けれど田島さんはマンションの中のごく普通のお風呂場で、その傑作友禅作品を洗っていらっしゃるのです。
私などはええかっこしいのところがある低級な人間ですが、田島さんは違う。これこそ純粋な芸術家の姿だな、とその場面を見た時、ちょっと涙がこぼれそうになりました。芸術作品は環境によって生み出されるのではない。作家の才能と情熱があれば、どこからでも傑作は生まれるのだということを思い知らされた場面でした。

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この日の講座では、休憩時間に両口屋是清の上生菓子と抹茶(お薄)を頂くという嬉しいおまけもありました。
何と、両口屋の職人さんが朝から出張で来られていて、六十人分作って下さっていたというお菓子!更に余分の材料で、その場で作り方の実演もして下さり、甘いもの好きの私はうっとり‥でした。
実は両口屋の上生菓子を食べたのは今回が初めてだったのですが、さすが、こちらは御三家の尾張徳川家御用達だっただけあって、とてもとてもとてもとても美味しい上生菓子でございました!

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また、この日もう一つ感激したのが、お茶があまりにも美味しかったことでした。
写真を撮るのを忘れたのが大失敗だったのですが、裏千家の桂宗裕さんが六十名分点ててくださったもので、裏千家らしくきれいに立った泡が、正に「名人が作る食べ物は見た目も良い」を地で行き、芸術的に美しく、お茶碗の中で均等に泡立っていたのでした。
そしてお味も‥!私もそこそこ茶会などに出ている方だと思いますが、間違いなく“人生ナンバー1お薄”のお味でした。
桂宗裕さんは、「美しいキモノ」にもよく登場されておきものコレクションをご披露されているので、ご記憶の方も多いと思います。きっと気配りもとてつもない方で、そうでなければとてもこんな味は出る訳がないだろうと思わされる一服でございました。
本当に、こんな方がされるお茶会はどんなに行き届いて素晴らしいのだろう‥と、ずぼらな私などは生まれ変わったらこんな女性になりたい、或いはこんな方を妻に持つ旦那さんになりたい、或いは、こんな方を部下に持つ女社長になりたい‥などといつものよけいな空想癖をぼわわんと頭に浮かべ、それにしても初夏の半日、たくさんの学びと“口福”を味わえたレクチャーだったのでした!

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