西端真矢

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新年に寄せて~今年の抱負と、きものコーディネイト写真も! 2014/01/05



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皆様、新年明けましておめでとうございます。
そろそろお屠蘇気分も抜けて来た頃ではありますが、今日の日記では昨年を振り返りつつ、新年の抱負など、したためたいと存じます。

思い返せば、昨年は、本当に良い一年だったとしみじみ言えるような、そんな年になりました。
夏にきものイベント“江戸着物ファッションショー”を成功裡に開催することが出来た他、まだ皆様にちゃんとお知らせ出来ていないのですが、出雲を旅して日本社会の過去―現在―未来について思いを巡らせた大型エッセイを、アート誌に発表することも出来ました。(これについては近々別に日記を設けてお知らせ致します)
また、「いろはにキモノ」誌、「伊勢丹アイカード通信」誌できものに関する取材・執筆を担当したり、「美しいキモノ」誌と「季刊きもの」誌に私自身へのインタビューをして頂く、という晴れがましい場も頂きました。
本当に、満点と言えるくらい嬉しいお仕事の続いた一年だったのでした。

          *

私は自分の人生に、三つの大きな努力目標を持っています。
その一つは、すぐれた文章作品を発表すること。
これは、分野は、時に随筆であり時にノンフィクションであり、そして、今後は、小説も書きたいという願いも持っています。
昨年発表した出雲に関するエッセイは、この一つ目の目標「文章作品を書くこと」を最良の形で実現したものとなりました。編集者とプロデューサーの方の深いご理解のお蔭で字数と時間とをたっぷりと頂き、100%納得の行く作品を書き上げられたことは、私にとって昨年1年間で、最大の喜びでした。


          *

私の人生の二つ目の目標は、愛してやまないきものに関わる仕事をすることです。
私自身はあまり手先が器用ではないので、自分で布を織ったりきものを縫ったり図案を描けたりする訳ではありませんが、きものがこれからもこの世界に存在して行けるよう、援護射撃をする仕事がしたい。
きものにまつわる大小様々なイベントを企画・制作したり、また、文章が書けるという特技を生かして、きもの雑誌や一般のファッション誌・情報誌などで、きものに関する記事を担当出来たらどんなに素敵だろう!絶対そういう仕事をしたい!――そんな風にこの数年思い続けて来た夢が、本当に現実となったのが昨年後半でした。これがどんなに嬉しいことだったかは、皆様にも想像して頂けるかと思います。

けれど――少しだけ浪花節めいた話になってしまいますが――この夢は、ただ机の前に座ってぼんやりお茶を飲んでいたらいつの間にか現実になっていた、そんな甘いものだった訳ではありません。
きものに興味のない方でもおそらくぼんやりとはお分かり頂けるように、きもの、というこの世界は、織りの種類や模様の種類、はたまた着こなしの変遷などについて、勉強しても勉強してもきりがないほどに深い歴史をその背後に蓄積しています。ただ「私、きものが大好きなんです!」「文章も書けます!」と騒いでも、私の前には既にたくさんのその道のプロフェッショナルがいらっしゃるのですから、とても食い込めそうにない。そのことを、この数年、少し売り込みをしてみてまざまざと感じていました。
だったらどうするのか?きものの仕事をしたい、というこの夢をあきらめてしまうのか?――実は私は2年ほど前までは、そんな悩みを抱えていたのでした。

その一方で、私自身には、とにかく子どもの頃から歴史が好きで好きでたまらないという“典型的歴女”の傾向があり、博物館で歴史的なきものの展示がある時にも出かけて行ってそれを眺めるのは素敵だけれど、でも、「本当に、このきものたちを人体に着せつけて、過去を目の前に再現出来たら‥!」という、いたって単素朴、歴史好きなら誰もが抱く妄想めいた夢を、常に博物館のガラスケースの前で、ぼんやりと吹き出しのように浮かべていたのでした。

そして、もう一昨年のことになりますが、2012年の秋頃に、思ったのです。
どうせこのまま「きものの仕事をさせてもらえませんか?」と各誌の編集部を回っても、決して相手にはしてもらえることはないだろう。だったらここで大きな博打を打ってみたらどうなのだろうか?と。
私が本当に見てみたい、きもののイベント。それは、江戸時代の人が今によみがえったように本物の着姿を再現するイベント。そんなこと、ちょっと考えただけでもあまりにも困難が多そうで(だってそもそもどこから江戸時代のきものをどこから調達すれば良いのでしょう??)、「素敵!」ときもの好きなら誰もが夢見がちに思うものの結局手をつけられないこと。それを自分が本当に実現出来たなら、この、日本の海千山千のきもの界の人々も、私の方へ振り向いてくれるのではないか?――そう思ったのです。

そう、いくら求愛しても相手にしてくれないお姫様に認めてもらうためには、武士は戦場で一旗揚げる必要があるのです。その一旗、いや、一か八かの大博打が、私にとっての“江戸着物ファッションショー”でした。
今でこそ「成功の裡に幕を閉じました」、と笑って書けますが、始めた時は、成功出来るかどうか、全く分からない。何しろきもの界にほぼ何のコネクションもない私だったのですから。
唯一、帯締の名門・道明の当主夫人であり、服飾研究家でもある道明三保子先生と家族ぐるみのおつき合いをさせて頂いていた、という一点のみ。ここを突破点としてまず先生、にイベントで講義をして頂けるようお願いに上がり、オーケーのお返事を頂戴した後、「道明先生が出ますから」という看板を掲げながら、「ここは!」と狙いをつけたきもの学校、呉服屋さん、全国の美術館、アンティークきもの店さんなどなどに突撃のプレゼンを繰り返しました。もちろん撃沈も数多くありましたが、一歩ずつ、本当に一歩ずつ、一点また一点ときものが集まり、スタッフが決まり、出演者が決まり‥7月のイベントへと結実して行ったのでした。

         *

思い返すに、その中でも最も象徴的だったのは、「着付けを担当頂きたい」と、装道礼法きもの学院様へプレゼンに伺った日のことです。
私自身は装道の卒業生でも何でもなく、ただ、友人の友人が「かつて装道で時代きもの着付けを習っていた」という細い細い、今にも切れそうなかすかな糸を頼りに、本部の方へのプレゼンの段取りを作って行きました。
時代きものの着付けというのは、現在私たちが着るきものの着付けとは大きく異なっているため、どうしても、専門の知識と技術を持った方に担当して頂かなければなりません。しかもその時点でイベントに利益が出るかどうかが分からなかったため、最悪、ボランティアになってしまうことをご承知おきの上で、依頼を受けて頂かなければなりませんでした。
こんな悪い条件で、しかも主催者は、きもの界で全く実績のない私。無謀にもほどがあるプレゼンでしたが、けれどこの着付け師が見つからない限り、イベント自体を行うことが出来ないのですから、私は本当に決死の覚悟で装道さんへ向かったのでした。
今ではよく笑って友人に話すのですが、その日、私は、白地のきものを着用していました。その上に閉めた帯は、細かな更紗文様を織り出した、赤地の一本。
白地のきものに、赤い帯。
そう、日の丸の取り合わせです。私の心はその日、本気で“日の丸特攻隊”でした。そのくらい強い強い気持ちで、このプレゼンに臨んでいたのです。

苦労したのはこうしたプレゼンや、時代考証的に正しいきものを一枚一枚、日本のどこかから探し当てて来ることだけではありませんでした。資金集めにも苦労しましたし、予算組も総て自分で行い、当日の進行台本も作成。宣伝の依頼を各媒体にしたのも私でしたし、クラウドファンディングで資金を集めたので、そのリターンの読み物配信も書かなければなりませんでした。更に、スタッフを雇うお金がないため、出演者のきものの襦袢の丈出しも、当然私自身が担当。おかげで襦袢の袖の運針は実はめちゃくちゃでしたが、まあ、客席から襦袢の中は見えませんので!――という話はここで閑話休題にして、これら全ての過程は、本当に誇張ではなく、命がすり減るようなものだったとしみじみ思います。

けれど、まるでその苦労に対するきものの神様からのご褒美のように、今、きもの業界にちらほらと私を応援をして下さる方々を得、また、準備過程で知己を得た「美しいキモノ」編集部様から「いろはにキモノ」のお仕事を頂き、その取材を通して更に新しいきもの業界のご縁が広がる‥と、そう、昨年私が打った一か八かの賭けは、どうやら吉と出たようです。
いや、吉と出た、と言うのはちょっと違うのかも知れません。本当のところは、吉にしなければ私にはもう後がない。このイベントに失敗したら、二度と私がきもの界に出せる顔はないだろう、というその強い背水の陣の決意が、むりやりさいころの目を変えたようにも思うのです。

        *

本当に、全力疾走の一年でした。
何しろこの江戸着物ファッションショーの総ての過程を、先に書いた、現時点での私の全知力・全魂をそそぎ込んだ文章作品である出雲のエッセイを書く作業と並行して行っていたのですから、我ながら、若干狂気じみた一年だったと言ってもいいような気もします。
更に、これもまた自分でも驚くべきことに、これらの仕事の他にも、無署名で書くビジネス系のインタビューなどのお仕事も、毎日の生活費を稼ぐために日々並行して行っていた訳で、本当に、昨年は、一年中走り回っている間にあっと言う間に暮れて行った感があります。

そして、そんな昨年を引き継ぐ今年は、では、ちょっと小休止したいのかと言えばそんな気持ちは毛頭ありません。むしろこの波をもっともっと加速させて行きたい。
何故なら――とここでしみじみと思うのですが、私は好きなことを仕事にしているのだから、根本的には全ての過程は苦ではなく楽であり、また、好きなことを仕事にしていてまだ不平を言うのは罰が当たるというものだ、と思うからです。
世の中には、「本当に好きなことは仕事にしない方がいい」とおっしゃる方がいて、その意見も理解出来ます。また、心から好きなことがあるものの、それに人様が対価を払ってくれる、そのやり方を上手く見つけられない、という方もいらっしゃるでしょう。或いはそこまでのレベルには到達出来ていない、という方もいらっしゃるのかも知れません。
そんな中、私は好きなことで何とかお金を頂くことが出来ているのだから(特に儲かってはいませんが‥)、やはりここで怠けていてはいけないと思うのです。

何かを本気で極めようとしたら、それが仕事であろうとなかろうと、楽しいことばかりではないのは当たり前のことではないかと思います。本気で極めることには必ず「現状を越えること」という課題が現れるのであり、それは楽々と達成出来るようなものではないと思うからです。
楽々と行えるなら、それは趣味であり、極めることとは違う。人生においてどちらが格上ということはないのでしょうが、自分は極めることを選び、更にそこから何がしかのお金を得られるなら、こんなに幸せなことはないじゃないか、と思うのです。

そのような訳で、今年もよりいっそう、うるさいくらいにぶんぶん飛び回り、仕事に邁進して行きたいと思います。
既に、今、きものに関する文章のお仕事で新しい企画が動き始めています。また、きものイベントの第二弾も実現するべく、少しずつ関係先とコンタクトを取り始めました。
どんな仕事も一人では決して実現出来ないもの。昨年も多くの方に支えて頂いたように、新しい一年も皆様のご協力や応援を頂けたら、大変大変嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します!

(写真は、先日、目白のきものショップ“花想容”に打ち合わせで伺った時に撮って頂きました!ほっこり暖かい焦げ茶色の色無地結城紬に、赤地に更紗文様の帯を合わせています。
そうそう、人生の三つめの目標については‥長くなってしまうのでまたいつかの機会に☆)
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