西端真矢

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「道明」の新ライン「DOMYO」誕生レセプションへ――「伝統」と「変革」、「継承」について考えた夜 2015/04/16



今日は青山の小原流会館地下1階にあるギャラリー「利菴ART’S COLLECITON」へ、帯〆・組紐の「道明」から誕生した新ライン「DOMYO」のお披露目レセプションへお邪魔しました。

「道明」と言えば、あの帯〆の「道明」。きもの好きなら知らない人はいない、江戸時代からの老舗中の老舗ですが、その「道明」から新ライン?しかも名称が横文字とは?と興味津々です。
何しろ、商品パンフレットの表紙がこんなロゴなんです↓
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ヨーロッパなどのおしゃれブランドの雰囲気。さてさてどんなお品と出会えるのでしょうか。頁を繰ってみると‥
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ネクタイや、イヤリング、ブローチなど。そう、日本では飛鳥時代からの伝統を持つ、組紐。その技術を応用して、洋装にも楽しめるラインとして誕生したのが、「DOMYO」という訳なのです。

私の写真があまり良くないので恐縮なのですが、今日の展示会に並んだお品が下の一連の写真です。
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↑蝶ネクタイ。「安田組」という組み方で組まれています。正倉院に「安田組」で組んだ帯が残っており、日本人とはざっと1300年!の付き合いの組み方!それが、現在の世界のファッションの主流である洋装にも応用されるのは、非常に非常に刺激的なことだと思います。色合いもとてもおしゃれですよね。
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↑こういったシンプルな配色のものも。
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↑こちらは、ネクタイ。本当に私の写真が下手でごめんなさい。お品を一点一て見て頂くと、とてもセンスの良い配色だということが分かると思います。締めた状態は、先ほど挙げたパンフレットの写真でご確認くださいね。

さて、ここからは女子の皆様必見。組紐を応用したアクセサリーです。写真が3枚続きます↓
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二つ対になっているものは、イアリング。一つのものはブローチ。手のマネキンに掛けてあるものが、バングルです。それぞれ、「安田組」「高麗組」「唐組」という、千年以上の歴史を有する伝統的な組み方で、でも、そういう歴史の話なんか、着る人にとってはぶっちゃけて言えばどうでもいいと言えばいい。直感で「かわいい!」と思えることが大事で、正にそういうお品ばかり。私は、これを応用して「ゼヒ帯留にもして頂いたらめっちゃくちゃかわいいのすが‥!」と思い、早速「道明」の皆様に意見としてお伝えしてみました。商品化されたらいいナ~。
もちろん、イアリングやバングルなど、洋風アクセサリとしても本当に素敵ですよね。全て1万円台~3万円台までですから、その価値に比べて決して高くないと思います。プレゼントにも良さそうです。

そして、これらのお品をデザインされた、デザイナーさんのお写真も撮らせて頂きました。イアリングをなさっています↓
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うっかりお名前を伺うのを忘れてしまったのですが、ヴィヴィアン・ウェストウッド(アナ・スイだったかも…すみません)などの有名メゾンでデザインをされていたキャリアをお持ちということで、「道明」の組紐から本当にクリエイティブに発想されて、「DOMYO」をデザインされた、ということになります。
実際につけていらっしゃるご様子も素敵ですよね。
こちらの展示会は、青山の小原流会館地下1階「利菴ART’S COLLECTION」で20日(月)まで開催されていますので、是非皆様足をお運びください。

            *

蛇足ですが、今日の私のコーディネイトはこちらです↓
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バックに写っているのは、「道明」製のタペストリ。こちらは「一間組」という組み方で組まれています。素敵ですよね~。
私のおきものは、「しょうざん」製。紬の訪問着です。地紋に水色で「氷割れ」文様を染め、同じ水色の「流水取り」の中に、黒で草花模様を染めている凝ったもの。いかにも「しょうざん」らしい模様ですよね。
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↑帯に寄ったのがこちらの写真なのですが‥
実は今日のコーディネイト、ちょっと着付けを失敗したなと思っています。上の寄りの写真で見て頂くと分かるのですが、この帯は、金色の部分と紺色の部分があり、紺色の地の部分は紬製。こちらの部分をもっと出して、金色の部分を、そう全体の3分の1くらいにどちらかに寄せた方が、調和の取れたコーデになったと思います。
うーん、悔しい。またその着方でリベンジしたいと思います。
帯〆は、もちろん「道明」の笹浪組紫ぼかし。帯揚げは、前回の日記でしているのと同じ、古布を帯揚げに応用したものです。

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創業1652年。かれこれ362年もの歴史を誇る老舗が、新しいラインを出す。この冒険心は、けれど、決して初めてのことではないことを、今夜、しみじみと思いました。
私は、昨年、「美しいキモノ」冬号で帯〆特集を担当した際、一生懸命帯〆と組紐の歴史を勉強し、また、道明三保子先生にも組紐に関するたくさんの知識を教えて頂きましたが、その中で深く感動を覚えたことは、江戸から明治へ、という大転換期に、道明が勇気を持って変革の道を歩んだ、という事実でした。
先生によれば、何かと言うと番付を作ることが好きだった江戸時代の人々は、「組紐商番付」も出しており、そこにはもちろん「道明」も載っているのですが、横綱ではないのだそうです。けれど、今、その横綱の組紐商は消滅してしまい、名前すら全く知られていません。もっと悲しいことに、その卓越した技術も何も伝わっていないのです。
それでは、何故「道明」が生き残れたのか。
そもそも江戸時代には今のような帯〆はなく、しごき(今の腰紐に近い紐)などを使い、帯を結んでいました。その頃の組紐商は帯〆は組まず、武士の刀に下げる「下げ緒」が一番の収入源。他に、様々な箱類などに締める紐を組んでいたのです。
けれど明治の世になり、武士は消滅。廃刀令が出たのですから、当然下げ緒の需要はなくなります。このままでは収入の道が‥という時、当時の財界茶人・益田鈍翁などの薦めで組紐を帯〆にしてみたらどうだろう、という話が持ち上がり、それに応えたのが「道明」でした。

ここからは私の想像ですが、恐らく当時、他の組紐商も帯〆に組んでみることを考えたのではないかと思います。けれど、「私らはれっきとした武士の刀の一部分を担って来たんだ。そんな、女の腹を巻く紐なんか組めるか!」――そう思った組紐商も多かったのではないでしょうか。
そして、そう考えた組紐商は、歴史の渦の彼方へ消えて行ってしまったのではないか。私はそんな挿話を想像しています。
けれど「道明」は帯〆、やってみるか、と変革の方へ足を踏み出した。
そのおかげで今、我たちは、飛鳥時代以来伝わる組みの技術を着付に必ず必要な小物として、身につけ、その美しさを愛でることが出来るのです。この変革は、決して、伝統の歪曲ではなかったと私は思います。勇気を持って新しい「場」を開拓し、「時代の空気を読んだ」からこそ、古き良きものが残せたのだ、と。

道明の現在の若社長がどのようなお考えから今回のラインを作られたのか、今日はレセプションの会場でしたから深くお話は出来なかったので分かりませんが、期せずして、祖先と同じ変革の道を歩まれていることに、やはり「老舗の血」というものを感じました。
老舗は、ただ歴史に固執するから老舗なのではないと私は思います。変革を恐れない、その勇気が屋号を継続させる。老舗とは、「残り続ける」こととは、常に変革を続ける存在であるなのだと私は感じています。
アルファベットの「DOMYO」が、これから洋装の世界へと、そしてグローバルな市場へと雄飛して日本の卓越した組紐技術を広く伝え、残し続けることを、「道明」のために深く念じます。そして、きものを深く深く愛する一きものファンとして、日本の染織技術が絶えず変革と継承を続けて行くことを、心より願ってやみません。
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