西端真矢

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季節の花を生ける 2015/05/26



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 少し前のことになりますが、端午の節句の頃、庭に咲いたあやめの花を手折り部屋に生けてみました。
 横に細長い長方形の花器に、あやめだけの一種生けです。

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 私は大学生の頃から生け花を習い(流派は真生流)、実は花がとても好きなのですが、花は、まず花を選び、花器を選び、そして生け始めると納得するまで何度も何度も生け直しが続くため、完成までに相当な時間を必要とします。真剣に花を学んだ人ほどそのことが分かるから、ちょっと時間が空いたくらいではなかなか生けようという気にはなれないのではないかと思います。(一輪挿しの花瓶にさっと挿すくらいなら別ですが‥)
 私もその例に漏れず、この一年ほど絶えず急ぎの〆切を抱えて全く時間の余裕がなかったため、「ああ、庭にあの花が咲いてるな、生けたいな」と思っても、到底無理とあきらめることばかりでした。
それが、ちょうどこの間の連休の少し前、急ぎの〆切が一旦途切れることが見えて来ると、「もう、この連休は絶対花を生ける!」と心待ちにしていたのでした。

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 そうして生けた今回の花は、実は、少し邪道の生け方をしています。
 と言うのも、普通、日本の生け花では主となる枝を三本で生け、二本で生けることはないためです。
「三本が基本」、これは、日本に花道が成立した室町時代からの鉄則で、日本の伝統美意識は、三点の均衡に美を見出していたと言えるでしょう。
 ‥が、今回あれこれ試してみましたが、どうしても三本目が良い位置に入らなかったため、家で、家族が見るだけ、ということもあり、このような生け方をしてみました。我が家では母も生け花をするため若干渋い顔で眺めていましたが‥気にしません!

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 それにしても、いざ花器の前に立つると、仕事のこと、人間関係の悩み、あれを買いに行かなくちゃ、あ、そうだあれも、そう言えばあのお食事会の段取りは‥といった毎日毎時間頭を占めている雑事が一瞬のうちに透明に色をなくして頭の中から消えてしまい、今、自分の目の前にある草花の、その茎の長さ、つぼみの開き具合、葉の長短やしなり具合、途中から分かれた細い葉を切るべきなのか残すべきなのか、この花とそちらの花、どちらを前に挿すか‥そういった、ただ花に関することだけに意識が自然に集中されて行きます。そうしなければ目の前にあるこの空間は決して埋められることがないのだから、集中する以外にない。この、花だけを見つめる、純粋な時間がとてもとても好きです。

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 そして、花は、自然から頂いて来たものであり、「この枝のこの花があと少しこちら向きについていたら…そうすればもう一本の枝と最高の調和が取れるのに…」などと思っても、それを変えることは出来ません。草花の種類によっては「ため」という技術を使えば或る程度枝の向きを変えることは出来るのですが、細い枝では折れてしまうし、不可能なことも多いのです。
 こうして、自然からの制約を受けながら、その制約の中で最高の調和を取って行く‥この真っすぐな努力こそが生け花であり、時間は瞬く間に過ぎて行きます。
 そして、日常の総てを忘れ、花だけを見つめていた無我の境地は知らぬ間に心にこびりついていた汚れを洗い落としてくれるようで、生けている間はずっと立ち続けた体は疲れているはずなのに、いつも、不思議なくらい、生け終わった時の心は清々しく、新しい力がみなぎっています。私は書道や武道はたしなみませんが、恐らく同じような心境を体験するのではないでしょうか。

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 それにしても、と思います。私は趣味を仕事にしているようなところがあって仕事が好きで好きで毎日が楽しくてたまりませんが、やはり時にはこうして、その総てを消し去ることも必要だ、と。
 真っさらな、無我の境地へと没入して行くこんな時間を、今年はあとどれくらい持てるでしょうか?願わくば、季節に一度か二度ほどは、花の前に立つ時があることを‥!

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「美しいキモノ」夏号、黒柳徹子さん、馬場あき子先生、鈴木登紀子さん(ばあば)のインタビューを担当しました 2015/05/20



本日発売の「美しいキモノ」夏号にて、黒柳徹子さん、歌人の馬場あき子先生、“ばあば”こと料理研究家の鈴木登紀子さんに、きものにまつわるお話を伺うインタビューページを担当致しました。

黒柳さんと馬場さんには、「戦後七十年を迎えて あのときの私ときもの」という特集で、戦前、戦中から戦後の混乱期まで、きものにまつわる思い出を中心に、どのようにあの苦しい時代を生き抜かれたのかを伺っています。謂わば、きものから語る、戦争。ゼヒ読んで頂けたらと思います。
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皆さん、黒柳さんがどんな方か知りたいと思いますので、インタビュー当日の私の印象を少し書くと、黒柳さんという方は、テレビで見る通り、とてつもなく明るい、プラスの力を、体の中心から発していらっしゃるような方です。
お背は小さく、テレビの収録の後にインタビュー場所にいらして頂いたので、たぶんお疲れでもあったかも知れないはずなのに、ひとたび黒柳さんがお話を始めると、何故だか分からないのですがその場にいる人の目が、耳が、自然とすーっと糸ででも引っ張られて行くような、そんな力をもっていらっしゃいます。
私はこれまでに仕事で様々な方にお会いし、黒柳さんと同じような、強い「惹きつけ力」をお持ちの方にお目にかかったことがありますが、或る場合には、その力は、暗く支配的であったりもします。けれど黒柳さんの場合は、心の底から明るい。これほどの陽の力を放っていらっしゃる方には、本当にお会いしたたことはありません。ああ、天はこの人に特別な力を与えたのだ、光の束のような人であり、人を幸せにする方なのだなと、しみじみと思わされました。
そして、そんな黒柳さんが当日お話し下さった内容は、あの永遠のベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」で人々の心に深く焼きつけられた天衣無縫な少女“トットちゃん”が、そのたった数年後、戦争の時代をこんな風に生き抜いて行ったのか‥と、強く心を揺さぶられるものでした。お話を聞いていて、私は二度ほど、涙が目の縁にあふれて来てとても困ってしまったほど。
そして、この、「トットちゃんと戦争の物語」を何とか読者の皆様に真っすぐに伝えられるよう、一生懸命原稿にまとめたつもりです。ゼヒお読み頂ければ嬉しく思います。
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そして、同じ戦後七十年企画でもうお一方インタビューをした馬場あき子先生は、日本を代表する歌人であり、能や日本の染織にも深く通じ、また、不朽の名著「鬼の研究」をはじめ、民俗学と文学とを統合したような素晴らしい著作を著わされている方です。
一体、これほどの文学者の言葉を、私のような者がまとめて良いものなのか?恐れに近い気持ちもありましたが、この大役を務めさせて頂きました。
今回のページを読んで頂ければお分かり頂けるのですが、優れた文学者というものは、その人生さえも文学の色彩を帯びるものなのかしら‥?そう思わされるほど、一つ一つの先生の思い出のお話が、まるで少し影を帯びたトーンの昭和期の映画の一場面のように、目の前に情景が浮かび上がって来るものばかりなのです。そしてその総ての場面を、先生が憧憬された、或る「きもの」がつないで行く‥非常に美しく、悲しい、鋭敏な感性を持った一人の少女と、きものと、戦争の物語を、ゼヒ皆様にお読み頂ければと思います。

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一方、NHK「今日の料理」や「キューピー3分間クッキング」などの人気料理番組で、“ばあば”の愛称で親しまれる国民的料理研究家、鈴木登紀子さんには、「きものmy style」というコーナーでインタビューをさせて頂きました。
テレビでは、きものに前掛け姿がお馴染みのばあばですが、では、ふだんはどんなおきものを着て過ごされているのか?コーディネイトの‘レシピ’は?愛用の和装小物や購入時のエピソードも含めてご紹介しています。こちらは、ゼヒ、楽しくお読み頂けたらと思います。

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「美しいキモノ」夏号は、私の担当ページ以外にも、夏紬や浴衣のコーディネイトが満載で、きものloverの強い味方に。
また、染織好きには必携の、徹底的な詳しさで産地を網羅する「染織レッドリストを救え!」関東編、染織研究家の富澤輝美子さんが明治から昭和まで時々の流行を解説する連載(毎回とても楽しみ)では、今回は「女子の袴」が採り上げられていたり。また、本当にきものの似合う木村多江さんの芭蕉布や麻きもののファッションページなどなどなどなど…見ごたえ、読みごたえある記事がいっぱいです。
また、地味な存在ではあるかも知れませんが、実は、「英語できもの」も、私がとても楽しみにしている連載。通り一遍ではなく、驚くほど徹底的に、英語できものを説明するための言い回しや用語を解説してくれています。外国人の友人の多い私にはもう、非常にお役立ち!の保存版。また、今は「外国の人とは接しないから関係ないわ」と思っているきものloerの皆さんも、この時代、きっと必要になる場面がやって来るはずですよ。今から購入して保存しておいてくださいませ!
‥と、大好きな「美しいキモノ」ですので、つい熱くなってしまいました。皆様、ゼヒ本屋さんに急いで頂ければ幸いです!そして、良かったら私のページも読んでくださいね♡
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本を書くために必要なこと――その一、舞台となる村を訪問する 2015/05/18



 私は今年、出版社と契約を結び、秋の終わりから執筆開始予定で、ノンフィクション小説の準備をしています(2016年5月発売予定)。こちらのブログで、これから時折り、その過程を写真もまじえドキュメントして行ったら面白いのではないか、と思いつきました。
 一体、本が一冊出来上がるまでに、作り手の側はどんなことを思い、具体的に何をしているのか?よく、作家が執筆前に「山のような資料を読んだ」というのを聞くけれど、では、一体どんな資料を読んでいるのか?そもそもその資料はどうやって入手するのか?取材ではどんな人と会い、どんな場所を訪ねているのか?装丁やタイトルはどうやって決めるのか?本当の意味で覗き見出来る機会は、意外と少ないのではないかと思うのです。そして、心の中の葛藤――例えば、書けない時に何を思うのか――も、時に記して行ければと思います。

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 さて、そんなドキュメントの第一回目は、取材旅行について書いてみたいと思います。
 先週の金曜日、前回の日記でご報告した手の大炎症も全くおさまらない中、担当編集者の方や今回の版元の皆さんと、山梨県北杜市の武川村という小さな村へ、取材旅行に出掛けました。

 この武川村は、「武川米」というブランド米の産地で、飛鳥時代から鎌倉時代までは、天皇に献上する名馬の産地としても知られた土地でした。戦国時代には武田信玄の配下に入り、戦となれば武田軍に参加した在地農民武士もいたようです。
 私がこれから書くノンフィクションは、明治から平成まで、小粒ながら良書を出し続けている老舗出版社を経営する、或る家族の物語。武川村は、その初代の出身地であり、明治43年、二十五歳で青雲の志を抱いて東京へと向かうまで、青年時代をこの地で過ごしました。
 もちろん、村についての資料は、東京でも、地方史資料を多く集める広尾図書館などで或る程度調べることは出来ます。作家の中には、現地に行かないで資料と想像力だけで書いた方が良いものに仕上がる、という考えの方もいらっしゃいますが、私は、出来る限り現地に足を運ぶべきと考えています。
 やはり、土地特有の空気のかんじは、写真や文字資料だけでは分からない。特に私は東京育ちで田舎暮らしの経験がないため、四季それぞれに一度は村を訪れ、自分の目と体で、村の空気、光、山からの風が肌に当たるその感覚、畑の間をくねって流れる小川の水音に耳を澄ませること――そういう体験が絶対に必要だと考えるのです。

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 そう、実は、武川を訪れるのは今回が初めてではありません。
 上の写真は、前回、冬、一月に訪問した時のもの。
 この時は一人で訪れ、一泊したのですが、とても運良く、一日目が快晴、二日目には雪となって二様の風景を見ることが出来ました。一枚目の写真の真ん中ほどには、薄っすらと富士山が写っているのがお分かり頂けるでしょうか?

 そして、下の写真二枚が、今回、春、先週金曜日に訪れた時のものです。
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↑一枚目の写真は、冬の一枚目の写真とほぼ同じ場所を撮ったもの(今回の方がカメラを左に振っています)。田んぼに水が張られ、稲が植わり、いよいよ今年の米作りが動き始めたことが分かります。
 こうして、実際に自分の足で田んぼの間を歩き回り、時に立ち止まり、この小さな盆地の村を囲む甲斐の国の山々と、富士山とを眺める。そう、主人公がそうしていたように――取材旅行の第一目的は、この、「ただ現場の土地を歩き、立ち止まること」にあります。

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 そして、取材旅行のもう一つ重要な目的は、その土地に来なければ見ることの出来ない資料を探し当てることです。
 前回は、武川村の図書館を訪ね、司書の方に来訪目的をお伝えしたところ、村の古老たちに昔の思い出を語ってもらった「聞き書き集」を大量にコピーさせて頂くことが出来ました。このようなローカルな史料は、やはり現地に来なければ探し当てることの出来ないものです。
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 一方、今回は「北杜市郷土資料館」を訪問しました。上の三枚の写真はその内部で撮ったものですが、この資料館には、明治から昭和初期頃までの、この地方の典型的な農家が移築展示されています。また、当時この地方で使われていた農具や生活道具も大量に展示されているため、つぶさに観察して写真に収めました。私にとっては、主人公の暮らしを書く上で大変に大変に参考になる資料です。
 そして、触れて良いものには触れ、学芸員や職員の方に声を掛けて、使い方の分からないものについては使用方法をレクチャーして頂きます。普通、このような郷土資料館はさーっと一通り見る方がほとんどだと思いますが、取材旅行では、事務室のドアをこんこんと、いや、もうどんどんっと激しくたたき、学芸員の方に展示室まで出て来てもらい、分からないことは分かるまで教えて頂きます。更に、必ずこちらの来意を告げ、後から関連資料を見つけたり思い出した時に連絡を頂けるよう、名刺を置いて行くことも重要です。
 こうして、今回の資料館取材では「道具」や「生活背景」への知識を深め、小説のディテールを豊かにするための基礎作りをすることが出来ました。

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 取材旅行、最後の大目的は、関係者へインタビューを行うことです。前回は、土地の古老に当たる方。今回は、明治から昭和まで、主人公一家の親子三代を知る親戚筋の方にお話を伺いました。
 ご年配の方へのインタビューは、耳が遠くなられていたり、方言を聞き取ることが難しい、というあたりがなかなか苦労の多い点なんどえすが、やはり直接お話を伺うと思いもかけないエピソードがぽろりとこぼれ出し、いつも足を運んで良かった!と思わされます。
 今回も、これまで調べた中では発見出来ていなかった、初代の戦時中のユーモラスなエピソードを聞き出すことが出来、また、思いがけなく、初代が子ども時代に奉公に出されていたお寺へと案内もして頂き、とても実りの多い取材となりました。

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 ‥‥このように、今秋終わりの実際の執筆開始まで、日々、地道な準備が続きます。今回は現地へと出掛けて行く、比較的‘アクティブな’取材をご紹介しましたが、東京で黙々と行う準備も実に様々と存在しています。
 冒頭に書きましたように、これから折に触れて記して行きたいと思いますので――時には書けない苦しみ爆発、という愚痴のような回もあるか知れませんが――本が出来るまでの舞台裏をゼヒ覗き見に来て頂ければ嬉しく思います。
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猫に噛まれて重傷に 2015/05/14



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ゴールデンウィーク明けからブログの現状を見直し、より充実した内容にして行こう、と考えていた矢先…、11日の夜に愛猫のチャミに噛まれた傷が大炎症を起こし、利き手である右手が全く使えなくなってしまいました(何と、鉛筆すら持てません。クッキーの袋を開けることも、髪を一つ結びに結わくことも出来ません‥)。
現在は毎日外科に通って抗生物質を点滴したり、消毒をしたり…手を下げてはいけないため、三角巾で吊り続けている状態です。
先生のお話では、腫れは通常一週間から十日は引かない。あともう一腫れするかも、とのこと。今でも十分芋虫状態なのですが…(>_<)
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ただ、こんなことになったとは言え、チャミを怒る気は全くありません。
事件の日も、私の帰宅が遅くなったのをずっと待ちわびていて、玄関の三和土のギリギリまで下りて待っていたことに気づかず、私がドアを思い切り開けてしまったのがいけなかったのです。
勢いで外へ飛び出し、出てしまうと怖くてたまらず、パニックになって私の手を噛んだり引っ掻いたりしてしまったのでした。
二枚目の写真は、負傷直後の手と、反省中のチャミ。この直後からみるみる腫れ始め、野球のグローブのようになってしまいました。
とにかく安静が一番とのことで、家事すら出来ず、ひたすら家で資料を読んで過ごしています。チャミは時々傷の辺りの匂いをかいで、ごめんなさいとでも言うように、ニャンッと小さな声で鳴くのが何ともいじらしく…。
もっともっと書きたいこともあるのですが、左手で打つのもそろそろ限界なので、この辺りで‥
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「わーと日本橋」200体きものコーディネイトちら見せ+くまもん羽織袴姿+お茶菓子、山口源兵衛コレクション 2015/05/07



先日日記にレポートを上げたきもの+アートイベント「わーと日本橋」、第2弾レポートをお届けします。
このイベントの大きな見せ場の一つである200体のきものコーディネイト。どんなコーデがあるのだろう?と気になる方が多いと思いますので、ごくごく一部になりますが、ご紹介をしたいと思います。

私がすごいなとうなったのは、染め師・岩下江美佳さんによるこの婚礼衣装。まずは寄りの写真をご覧ください↓
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おめでたい「宝尽くし」文様の地紋がある生地を使ったこのおきもの。よく見ると、地紋は凹凸をつけて織り上げられていることが分かります。その上に、江戸小紋で細かくドットが染め上げられているのです。
「江戸小紋」は、もう皆さんも良くご存知だと思います。型紙を使い、極小の文様を染めて行く技法ですが、普通の平らな反物にさえしっかりと極小文様を染めるのは難しいのに、凹凸のある生地に…!
…と驚愕していたところ、たまたま会場に岩下さんがいらしたので、
「ああいった布に対しては、ぐっと型紙を押しつけて染めるんですか?」
とお聞きしたところ、
「いや、逆に軽くふわっと置いて染めるんです」
とのお話でした。確かな型染技術をお持ちでなければ出来ないこの技。玄人がうなる作品だと思います。会場に行かれたら、ゼヒ皆さん、注目してください。
更に裾にはこんな風に美しく花模様も染められ、岩下さん、一体いくつの技術をお持ちなのですか!と感嘆してしまいました↓
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↑他にもこんな素敵な婚礼衣装が展示されています。

個人的にほしいな、と思った、この二枚。全くの偶然で驚いたのですが、どちらも京都の栗山工房のお作でした↓
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上は、夏の麻のおきものに、格調高く古典文様を染めたもの。何とも品が良く、通なお着物だと思いませんか?ほしい!と一人トルソーの前で唸っていました。
もう一点、下の明るいペパーミントグリーン地のおきものは、紬に染めたもの。もう理屈屈抜きに、こういった色合いが大好きです。ちょっと私の年齢ではもう若いおきものですが、とにかく大好き。若かったら絶対着たいきものです。

若いと言えば、面白いなと思ったのが、このおきもの↓
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グラフィティのようなもようを大胆に染めています。染色家・橋本真智子さんの作品。白大島の生地に、奄美大島に自生する植物を染料に使って染めた作品ということです。
私はモダンきものと言われるものにほとんど感心したことがなく、ただ洋服の模様をきものの上に置いてみただけで面白くないな~と思ってしまうのですが、この柄の付け方には、古典の格子柄(例えば、翁格子など)とも通じ合いながら現代性が保たれていることを感じ、ぐっと来てしまいました。

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さてさて、ここでちょっと休憩して、アイドルショットを!

一昨日、5月5日のわーと日本橋には、くまもんが登場しました。
きもののイベントということで、日本男児の正装、紋付き袴を着ています。あまりの人気に後ろの方からの撮影で、全身が撮れていなくてすみません‥!
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こちらの衣装は、きものデザイナーの木越まりさんがデザイン、そして、私が仲良くして頂いていて、この日記にも度々登場しているのでもう皆さんにも覚えて頂いているのでは?と思う渋谷の和裁所、「プロきものスクール」の海老原美智子先生が縫いを担当しています。
海老原先生と会場で少しお話したのですが、くまもんは何しろ首がないようなあるような、更にとてつもなく太い首なのでどう布の上に寸法を落とし込むか、相当苦労されたようです。
しかもみて下さい!ちゃんと比翼もついた正式の上にも正式な一揃いなんですよ。最後は徹夜で縫われたとのこと。エビ先生、お疲れ様でした!

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さて、コーディネイトに戻って、夏のおきものでもう二枚素敵だなと思ったものをご紹介。
一枚目がこちら↓
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京都の人気きもの店「きもの鶴」の店主、舞鶴曜子さんが出されていたお作です。絹紅梅と思われる透け感のある生地に、クラッシクな花の文様を染め、何とも涼しげ。しかも女らしくて。歩いた時にふわっと動く裾から、涼感がただよって来る様子が目に浮かびました。
このきものの見せ所をしっかりと伝える、着付け師・望月なぎささんの着付けも見事ですね。
地紋の部分はかわいらしいドットが染められているのですが、私の年齢なら、万筋のような細い縞に染めたいかなと思ったり。妄想が膨らみます。

二枚目は、「一貫工房一矢」さんの作品↓
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シャリ感のあるオリジナル織り生地に蝋纈染めで花火の柄を染めたもので、夏の夜の華やかさと涼感が両立しているかんじが、「ほしい!」と思わされました。

              *

ここでまたまた休憩タイム。
わーと日本橋の竹の天空茶室では毎日茶会が行われていることは前回の日記でもレポートしましたが、そこでは毎日日替わりでお菓子が供されています。私が参加した初日の茶会で頂いたのがこちらのお菓子↓
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神楽坂の「梅花亭」のお作で、天空茶室という今回の茶会のコンセプトを見事に表現しています。
あまり写真が良くなくて恐縮なのですが、よく見ると、一層目と二層目の間にブルーの筋が入っていることが見えると思います。そう、まるで成層圏と大気圏の間を自在に行き来するようなイメージ。
もちろんお味も大変美味しく、この創造力に感嘆したのでした。
先ほども書きましたように、茶会は毎日数度行われ、毎日違うお菓子が頂けるので、きっとこの日の他にも素敵なお菓子が登場していると思います。わーと日本橋はまだ10日まで開催しているので、ゼヒ皆様、参加されてみて下さい。人気も高いので、会場に着いたらまず席を予約されることをお薦めします!(一昨日、私は出遅れて予約いっぱいで入れず、でした‥)

              *

また、わーとの会場では、このような大きな染め物作品も飾られています↓
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端午の節句を挟んだ会期にふさわしい鯉の大判幕。京都の老舗中の老舗「誉田屋源兵衛」の作品です。
「誉田屋源兵衛」からは、現当主の山口源兵衛さんが他にも展示を行っていまして、その中には戦国桃山期の名物小袖を復元したものもありました。撮影禁止ということでここではお見せ出来ないのが残念なのですが、そこに書いてある山口源兵衛さんの解説が素晴らしく、これを読むだけでこのイベントに来る価値があると、私は強くお勧めします。
例えば豊臣秀吉の小袖を再現したおきものに添えられていた解説には、
「秀吉の衣装には過剰な気負いが感じられる、人並み外れた絢爛豪奢な天下人の衣には、恍惚と不安が同居している」と。
これは、服飾史と歴史と技法とを全て知り尽くしている人にしか書けない言葉だと思います。感動のあまり、しばしこのきものと解説ボードの前に立ちつくしてしまいました。山口源兵衛さんのコレクション、皆様ゼヒご自分の目でご覧になってください。

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最後に二体、コーデのご紹介を。
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↑こちらは、きものスタイリスト小林久美さんのコーディネイト。きもの初心者から毎日きもの!のきもの愛好家まで、一枚はワードローブに入れておきたい格子柄の紬きものを、楽しくコーディネイトしています。
こうして反対色を上手く入れ込んで行くことが、きものコーデの楽しさだと私は思います。同系でまとめるのもすっきりして素敵ですが、洋服風から離れて、きものらしさを現代の感覚の中に溶け込ませたコーディネイトではないかと思います。

そして、これぞきもの!と思わせるコーディネイトがこちら↓
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浅草で新舞踊の家元をされ、きもの店「胡蝶」の経営もなさっている加藤胡蝶さんのコーディネイト。洋服のコーディネイトとは全く違う色使い。セクシーさなど狙わなくても自然にただよう、独特の色っぽさ。私もこういうコーディネイトをしてみたいものだと思いながら、なかなか到達出来ません。

…と、やっぱりきものイベントはコーディネイトを見ることが一番楽しいような気がします。何しろ200体もあるので、好きな作品、参考にしたい作品がきっと見つかると思います。
10日まで、そして毎日20時まで開催していますので、ゼヒCOREDO室町の「わーと日本橋」へ足を運んでみて下さいませ!

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大型きものイベント「わーと日本橋」訪問レポート(きものコーデとお買い物戦利品写真付き) 2015/05/03



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ゴールデンウィークたけなわの昨日、日本橋のCOREDO室町で開かれている「わーと日本橋」に遊びに行って来ました。
「わーと日本橋」は、5月2日から10日まで連日開催中の“きもの+アートイベント”。会場中心には今注目の竹アーティスト「ちかけん」による巨大空中茶室が組まれ‥↓
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その周りをぐるっと200体ものトルソーが囲んでいます。
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もちろん、トルソーが着ているのはきもの・きもの・きもの。有名きものスタイリストやきもの店、きもの作家、きものメーカーがこれぞ!というきものスタイルを披露下さっています。
まず、これを見ることが楽しく、人気投票もあるので「私の清き3票をどのコーデに…」と考えるもう一つの楽しみも。

              *

そんなきものイベントに着て行った私のおきものをまずはご紹介。
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昨日の東京の気温は25度近くあったので、迷わず単衣を選びました。しょうざんの単衣紬訪問着に、軽めの織りのしゃれ袋帯。帯揚げに黄緑を入れて、新緑の雰囲気を演出してみました。
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この帯は、友人のおばあさまの遺品を頂いたもの。小ぶりの幾何学模様が織り込まれていてかわいいのです。帯揚げの結び目がおかしくてすみません‥

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さて、上の私の写真の隣りに写っているのが、「わーと日本橋」のメインビジュアルに使われているお人形。資生堂などとのコラボでも知られる人形アーティスト宇山あゆみさんの作品です。
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60年代の人形を使いながら、しぐさ、きものまで美意識の粋届いた作品。この作品三つを見るだけでも来る価値がある展示です。

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他にも、展示は様々で紹介し切れないのですが、例えば…
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↑西村織物所属の中村あやめさんによる、精緻な縞の織物の展示。
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↑昨年の宝塚百周年公演の舞台衣装。きものデザイナー木越まりさんによるデザインです。伝統を踏まえながら、宝塚らしい華やかさが素敵☆
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↑こちらは、カタールの国をイメージしたきもの+帯。「IMAGINE ONE WORLD KIMONO PROJECT」という巨大きものプロジェクトの中の一作品です。
このプロジェクト、一体どのようなものかと言えば、2018年の東京オリンピックに向け、世界の各国をイメージしたきものと帯を日本の染め・織りの名匠・名工房が作品化する‥という壮大なもの。このカタールのおきものと帯では、駱駝の歩く砂漠の中に出現したかの国のビル群を、きものと帯に幻想的に描き出しています。本郷葵紅さんの作品。
他にも、ブラジル、ツバルなどの作品が展示されています。ブラジルは、千總と龍村美術織物のコラボレーションだったり‥と本当に豪華。この展示もまた見る価値有りです。

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ところで私、会場で買い物もしました。「わーと日本橋」では「きものマルシェ」も開催中。前からほしかった和ランジェリーブランド「wafure」の仮紐、手に入れることが出来ました♡
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↑今朝、家で朝の光で撮ってみたのですが、見て下さい、この美しさ。
恥ずかしながら、これまで私、着付けの際お太鼓を仮に紐で押さえておく際の仮紐は、汚れてしまった帯〆を転用していました。でも、そんなのって何だか気分が下がってしまいますよね。
「wafure」のデザイナーでありオーナーである尾上博美さんとは、言葉に出さなくても何か通じ合うものがあると言ったら良いのでしょうか、とても気が合い大好きな女性なのですが、こんな素敵なお品を出していることを知り、前から「早く使いたい!」と今日のイベントを楽しみにしていました。
着付けの時から心に寄り添うものを使って身支度する楽しさ。明日もきもので外出の予定があるので、早速明日から、この仮紐で気分上々に着付けをして出掛けたいと思います。
一つ私の失敗は、博美さんと写真を撮るのを忘れたこと。素敵な帯を締めていたしゼヒ撮りたかったのに~!お喋りに心を奪われたりして忘れてしまいました。またの機会を狙いたいと思います!!!

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最後に、竹の空中茶室での茶会をレポート。
今回の席主は、裏千家の吉森宗弘、宗光ご夫妻。伝統をしっかりと取り込んで滋養とされながら21世紀を生着る感覚をもみなぎらせた、そして、今回の場=「竹筒に穿たれた穴から落ちる木漏れ日のような灯り」とも見事に調和した、素晴らしいお道具組でした。
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↑上のお写真が、お点前をされている様子を撮ったもの。私たち客一同は、この茶室を取り囲むようにして置かれた椅子に着席してお茶を頂きます。
宗光さんが使われている袱紗をご覧ください。鶸色が五月の気分とこの場にふさわしく、行き届かれた美意識に感嘆致しました。後ろに座られた宗弘さんのお羽織も、白地をベースに卵色や浅葱色などのぼかしになっていて何ともおしゃれなのです。
そして、お釜を入れている風炉が、鮮やかな青の交趾焼き。お隣の水指は、もともとは花瓶として作られていたものに、後からガラス作家萩原龍山さんに調和する蓋を作って頂いたのだそうです。蓋のつまみはビー玉を使われています。もう、この感覚にうっとり。
そして、風炉先が、茶室全体をつくられている「ちかけん」さんのお作、という訳です。
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↑お床の前でぱちり。お軸は、海老原露厳さんが今回の会のために書いてくださったという作品。「風光」と書かれています。乾隆帝所有だった墨を使っているということで、古の中国文化を好む=シノワズリ趣味のある私にはたまらないお作でした。
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↑お棗は、加賀蒔絵の吹雪。螺鈿も使われた大変に華やかなもので、やはりお茶人であられた宗浩さんのお父さんより伝わったものなのだそうです。御前秀邦作で、模様は蜀江紋。お茶尺の軸は象牙製です。
たくさんのきものに囲まれた今回の会場で、その華やかさに拮抗するものとして、このお棗を選ばれたのだと思います。この美意識に敬服しながらうっとりと拝見致しました。

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…こんな風に、きもの、茶会、お買い物、様々な展示、と盛りだくさんに楽しめる「わーと日本橋」。10日まで毎日、COREDO室町で開催。私もまた5日に遊びに行く予定です(5日にはあのくまもんが、羽織・袴を着て来場するらしいですよ!)。
皆様も是非ゴールデンウィークのご予定に加えてはいかがでしょうか。
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