西端真矢

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awai 紅子さんの旅立ちに寄せて(紅子さん、私、エビ先生のコーディネイト写真付き!) 2015/03/24



 今月の初め、東京のきもの好きの間には驚きのニュースが走ったかと思います。六本木の人気ショップawaiの女将・紅子さんが、3月30日をもって「awaiを卒業します」と発表されたのですから‥

 実はその少し前、偶然某所でお会いした折に、紅子さんからこの卒業のことをお聞きしていました。その瞬間、まず思ったのは――紅子さん、ごめんなさい――「り、離婚‥?」。
 私のブログはきもの好き以外の方も読んでくださっているので少しだけご説明すると、「awai」さんは、博多の老舗帯織り元「岡野」さんが経営するきものショップで、洋服が中心となった現代のライフスタイルからつかず離れずした、絶妙の都会的なきものスタイルを打ち出されています。
 支配人の木下勝博さんと女将の紅子さんは、ご夫婦。365日きもので生活されているおしどり夫婦として、きもの好きの間ではつとに有名なのです。

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 ‥と、そんな訳なので、紅子さんがawaiを離れると聞いて、まず離婚、という不穏な発想をしてしまったのですが、と言うのも、紅子さんが「きものそのもの」から離れるとは考えられないし、何しろ紅子さんはその美しさと着こなしでawaiスタイルを体現する存在だったので、籍を離れるとしたら離婚しかないのでは?と思ってしまったのでした。

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 けれど、少しお話を伺うと、紅子さんの決意はもっともっと深い思いに根差すものだということが分かりました。それを一行で書くと、「きものへの理解をもっと深める。そのための時間を作るため」。
 もちろん日々きもので生活されて日々商品に触れ、お客様の相談に乗っていらっしゃる生活であれば、知らず知らずのうちに織り・染めへの知識は深まって行くものと思います。けれど、それ以上にもっと深く、もっと体系的に、きものについて、日本の染織について、学びたいという思いが強くなったのだと紅子さんは話して下さいました。
 もう既に学校に申し込みをされているとのことで、和裁に始まりめいっぱい学ぶ日々が、4月からは始まるのだということでした。
 そしてもちろん、ただ学んで終わり…ではなく、いつの日かまたawaiに戻られるのか、或いはフリーで活動されるのか、それは今の段階ではまだ分からないけれど、必ずバージョンアップした紅子さんとして、きものに一生関わって行く。そんなひたむきな決心がひしひしと伝わって来て、思わず私は泣きそうになってしまったのでした。
     
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 思えば、紅子さんと初めてお話をしたのは、2年前の夏のことでした。雑誌『いろはにキモノ』の「人気きものショップ店員さんの1weekコーディネイト」に紅子さんにご登場頂くことになり、私がそのページを担当したことがきっかけです。
 ここで一つぶっちゃけ話をしてしまいますが、――だって。ブログはきれいごとばかり書いていても面白くありませんからね~――正直な話、この取材に行く前、私は「awaiか~行きたくないな~でも仕事だから仕方がない」と一人ぶーたれていました。
 それは何故かと言えば、私は、母方の家系が金沢の出で、きものの取り合わせの好みにもその影響があるため、また、家系とは関係なく個人的にとにかく「色をまとうこと」が好きで、例えば会社員時代にはいつも違う色のワンピースを着て通勤していたため、「マヤさんて、ほんとに全ての色を着ますよね」としみじみと受付嬢に声を掛けられたほど、様々な色をまとうことが好きであるため‥
 …そんな私にとって、awaiさんのようなシンプルでクールな配色、シンプルなきものスタイルは、ちょっと自分の本筋の好みとは違う。別に違っていても全く構わないのですが、もしかしたらawaiさんは、ご自身の打ち出されているスタイル以外は全て古くさい、ダサいと見下すような、そんなところがあるのではないかしらと危惧していたのでした(だって世の中時々そういう方がいますから)。
 そんな訳で取材当日は、「は~何か行きたくないな~でも仕事だし‥。編集会議で、東京スタイルを体現する存在として、awaiさんにはゼヒ出て頂かなきゃ、って決まったしな~」と自分にびしびしと鞭を打ちつつ、家を出たのでした。

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 ‥と、かなりぶっちゃけトークですね。
 けれど私のそんな危惧は、あっと言う間に杞憂に変わりました。
 当日は、紅子さんが1コーディネイトを着用されて撮影が終わると、すぐ次のコーディネイトへと着替えに入ります。誠にあわただしく大変な大変な撮影なのですが、その着替えの間、私やカメラマンは待ち時間となります。7コーディネイトを披露頂く訳ですから、6回待ち時間が来るのですが、その間、現場に立ち会われていた旦那様の木下支配人に、詳しくお店の理念についてお聞きする時間がありました。
 私が一番驚いたのは、
「僕らは別に、自分たちのスタイルだけが総てと思っている訳じゃないんですよ」
 という言葉でした。
 自分たちがこれが良いと思うスタイルはもちろんあるけれど、例えば、awaiの常連のお客様だって、基本はawaiスタイル、だけど、時にぱっと派手・華やかな一枚がほしい、という時もある。そんな時に自信を持って、「じゃあ、***がいいですよ」と、「僕らが自信を持ってご紹介出来るような、そんなお店がどんどん出て来たらいいと思っています」と仰っていて、何て真っ当で、何て本当の意味で信念のある考え方だろうと、その瞬間、ああ、この人たち、私は好きだなと思ったのでした。
 もちろん、私だって、awaiさんのようなシック、クールな世界観で過ごしたい日もあります。そして、色々なスタイルの選択肢があることが、きものがこれからも未来永劫続いて行くために必要だと思っています。awaiはそういうことを総て含んだ上でのawaiスタイル、なのでした。

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 ‥と、そんな風に、一気にawaiさんファンになった私は、その後も折に触れて木下さん、紅子さんご夫婦にお会いし、楽しく会話を交わすことがありました。
 そんな中で、昨年秋の終わり、紅子さんと、それから、和裁所の「プロきものスクール」代表の海老原美智子先生略してエビ先生と、それから「プロきもの」の和裁士でawaiの常連さんであるAさんの四人で女子会をした日のお写真を、紅子さん卒業記念?に今日は掲載したいと思います!
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↑女子会出発前に、awaiの店内で撮ったものです。
 紅子さんは墨黒と鼠色で大きな縦縞になっているおきもの姿、シックで本当にお似合いですね。渋好みの江戸後期の女性がタイムスリップしてこちらのお着物を見たら、ほしい!と言う気がします♪
 私は、祖母から伝わっているほっこり焦げ茶の色無地結城に、これも祖母から伝わっている、織りで更紗風文様を織り出した、たぶん紹巴織りの帯(紹巴かどうか確かめようと思って放置しています‥)。
 私の左が、エビ先生。鮮やかな紫の色無地に、黒地のawaiさんの博多帯、awaiさんの帯〆。こちらのコーディネイトもきりっと楽しいスタイルですね♪
 そして、一番右が、Aさん…ではなく、Aさんはお写真出しNGなので、木下支配人。でも木下さんは女子ではないので女子会はお休みでした♪
 それから、皆さん私の帯留が大きくて気になると思いますので、寄ったものを↓
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こちらも祖母からの伝わりもので、木彫で、向かい合った獅子をデザインして。帯〆部分とセットになったもので、かなりの迫力。牡丹の帯に合わせるのも良いかも知れないですね。

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 そして、今日の日記の最後に、紅子さん、女将として走って来た7年間、本当にお疲れ様でした。すぐに学生生活が始まって、週5日めいっぱいとおっしゃっていたので「ゆっくり英気を養ってね」ではなく、また違った速度で走りながら、英気を養って行くのだと思います。これからの紅子さんが本当に楽しみ。ずっと応援させてくださいね。そして、また時々女子会、行きましょう!
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