西端真矢

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新しく購入した桐生絞りのきもので、展示会に 2015/03/12



 昨年、暮れも押し詰まった頃のことでした。母がウキウキと帰宅して、
「今日、素敵なきもの買っちゃった♡」
 もちろん、きもののことですから、お仕立て上がり待ちでその場にものがある訳ではありません。どんなのどんなのー?と勢い込んで訊くと、
「あのねえ、水色っぽくてねえ、絞りでね、ぼわーんとしているの。とにかく個性的で、素敵なのよ~」
 と分かったような分からないような返事。ワクワクと待っているとそのきものがついに先日仕立て上って来たのでたとうを開くと‥確かに、確かに素敵でした。そしてとても個性的。
「かわいいー!ママ、センス良過ぎー!これは素敵過ぎる!」
「でしょう?私センスいいのよ」
 と、よそのお宅の方が聞いたらバカ母娘そのものの会話が続いたのですが、ふと我に返って「これはどこのおきものなのだろう?」と証紙を見た瞬間、また叫んでしまったのでした。
「泉さんのきものだー!」
「え?何?知ってる人なの?」
「知ってる!」
 そう、とてもとても驚いたことに、以前、私が敬愛する“伝説の百貨店バイヤーである私の自慢のお知り合いの素敵なおじさま”からご紹介頂いていた、桐生の「泉織物」の泉太郎さんの作品だったのでした。

          *
   
 そして、今日、その泉織物さんも参加する、業界向けの桐生の織り元さん総合の新作展示会が開かれていたので、もちろん!泉さんのおきものを着て出掛けました。そしてもちろん!泉さんのブースの前で、一緒にお写真を撮って頂いたのでした。
 じゃーん、素敵でしょう!!!(注*帯周りの寄りの写真は後に掲載します)↓
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 きもの好きの皆さんはもちろんご存知の通り、桐生は江戸時代から続く織物の一大産地。その中で泉織物は明治後期に創業され、泉さんで四代目。一番の特徴は、上質な桐生織りの生地(紬も、垂れものも、お召も)に、絶妙な色のトーンで自在な絞り模様が施されていること。“桐生絞り”として、群馬県の伝統工芸品にも指定されています。
 下の写真が我が家の購入した反物の証紙の部分なのですが‥↓
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 幾つもの技法を使ったとても複雑な絞りになっていることが分かって頂けると思います。(この写真はちょっと色が暗く出ています。本当の色は、一番上の着姿の写真の色になります)
 
 泉織物の生地と絞りの融合を追究した作品は、本当に様々な顔を持っています。上の写真で衣桁に掛かっているお着物もとても素敵ですし、同じような淡い色調で、染めと絞りを組み合わせた様々な着尺が展示されていました↓
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 そうかと思えば、下の写真の後ろに掛かっている帯地のように、シンプルな絞りで猫ちゃんを描き出したものがあったり↓
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 何とも素敵なお品の数々なのです。

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 ちなみに私のきものと色違いの反物も本日持って来ておられ、技法を教えて頂いてしまいました。(すぐ下の写真と併せてお読みください)
 まず、真っ白な反物にたくさんの丸をくくって、グレーの染料で染める。糸をほどくと白くぼわんとほたるのような丸が浮かび上がる訳です。
 その後で、今度はこの写真のように屏風畳みにして‥↓
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 数センチ刻みで糸を通してくくり、全体を紐に巻き付けて行くのだそうです。そしてピンク色の染料につけると、畳み込まれなかった部分だけがピンク色に染まって筋の模様になる‥という仕組みなのだとか!
 でも、よく見ると筋の模様も濃淡の二色があるので、後の工程は2回しているのだと思われ‥これはやはりかなり手が込んでいますね。作り方を知ると、ますますこのきものが愛おしくなって来るのでした。

 泉さん、ご商談の合間を縫ってご説明を頂き、本当にありがとうございました!こちらのおきもの、これからも帯を替えて、様々に着て行きたいと思います☆

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 今日の展示会には、桐生の他の織元さんのブースも。
 こちらは、明治3年創業の「後藤」さん。一番手前に飾られているのは、憧れの!丸帯です↓
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 キャー!お高そう~!「後藤」の丸帯は、先日、朝ドラの「マッサン」の結婚式の場面でも使われたのだそうです。NHK、いい帯使っているのね~↓
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 丸帯だけではなく、袋帯も半幅も、様々な帯を作られていて、私はこちらの写真右に写っている袋帯が素敵だなと思いました。名物裂の「木下金襴」を「後藤」さんの色調で織り出した格調高い一本。お茶会にぴったりじゃないでしょうか?素敵~!↓
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 こちらの「井清織物(いのきよおりもの)」さんは、現代的な感覚の織りに絞った作風が特徴です。例えば下の八寸名古屋帯↓
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 経糸に、撚らずに束ねて太さを出した糸を、緯糸にもくず繭から取った糸を使ってざっくりした風合いを出しています。経糸は、束ねただけではばらばらになってしまうので、細手の絹糸で巻いているのだそう。「巻き絹」という技法です。
 唐花の模様が都会的な色調で織られていて、全体としてはとても格調高い。でも、かしこまり過ぎない。絶妙な感覚だなと思います。
 
 その他に、「大人のファブリック帯」として、新作も紹介されていました↓
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 きものが外出着の中心になって来ると、映画を観る時や打ち合わせの時など、お太鼓で長時間座るのがつらい場面では、ファブリック帯や半幅がいいなと思います。素敵なファブリック帯、どんどん作って頂きたいですね。

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 …と、桐生織りの新作を拝見した楽しい午後でした。
 あ、私の帯周りはこちら↓
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 帯は、塩瀬地に桜の花びらがほんの少しだけ描かれているのが分かるでしょうか、今の季節しか締められない季節ものの帯。おきもの友だちが手放されたものを、お安く譲って頂いちゃいました♡
 帯〆は、道明の藤色の冠組。
 帯揚げは、龍工房の、中心部分に卵色で絞り、茶色で筋模様を入れたもの。
 今日は何と言っても泉さんのおきもの中心。全体をシンプルにまとめて、帯揚げで少しだけアクセントを付けてみた取り合わせです。
 (何故か今日に限って反対側に結び目が出るように帯〆を結んでいるのが、自分でも謎です‥どうしてこうなったのでしょうか‥)
 
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 それにしても、会場では洋服生地を作っている桐生の織り元さんも多数展示をされていて、桐生は本当に織りの街なんだなということがよく分かりました。
 井清(いのきよ)さんの話では、きもの地の織り元の隣りに洋服地の織り元があって、その隣りはきものの染めだけやっていて、その隣りには反物を巻く芯を作っている工房もあって…と、街全体が本当に糸偏(いとへん)で成り立っているところなのだそうです。
 着道楽にはたまらない、夢のような街‥。桐生に行ってみたくなりました!
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