西端真矢

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山口組分裂!‥きもの好きと噂の司忍組長をきものファッションチェック! 2015/09/08



本日のきもの日記はふだんとはがらりと内容を変えて、山口組六代目司忍(つかさ・しのぶ)組長を中心に、“極道きものファッションチェック”をお送りしたいと思います!ふ、ふ、ふ‥
そう、近頃、日本最大の暴力団山口組分裂のニュースが世間を騒がせています。堅気中の堅気の家に生まれ人生100%堅気に生きて来た私ですが、人と人との間に働く策謀の問題に関心があるため、関連ニュースを何件か検索して行くと、司忍(つかさ・しのぶ)組長の並々ならぬキャラの立ちぶりが気になって来ました。
ニュース番組でご覧になった方も多いかと思いますが、服役から出所した時の写真↓
http://www.sankei.com/west/photos/150831/wst1508310024-p3.html

こちらは動画です↓

とてつもなくダンディーで、海外でも話題になったと言います。このコートはマッキントッシュ製でしょうか?六十代後半にしてチェック柄のコートをこうも見事に着こなせるとは‥。革製と思われる帽子も、文句のつけようがなく似合っています。

更に経歴などを読み込むと、武闘派の面も持ちながら、現代的な、頭脳派ヤクザのあり方を標榜(経済ヤクザということでしょうか?)、愛読書は何と哲学分野!たいていの哲学書を読破しているそうです。
哲学科出身の私、組長に会う機会があったら(一生ないと思いますが)、「銃撃戦における永遠と一瞬」というテーマについて、存在論的に会話が弾むのでしょうか‥!

きもの好きと評判の司組長のきものファッションチェック!!!
…などとバカなことを考えていると、きものを仕事としている人間として、見過ごせない一行に出会いました。何と、司組長は、大のきもの好きであるそうなのです。
そこで早速画像検索してみると、確かに色々と発見出来ました。
例えば、この産経新聞のインタビュー↓
http://www.sankei.com/west/photos/150831/wst1508310024-p1.html
明るいグレーの縮緬地と思われるきものは、細かく格子を染め出しています。なかなかこの色はきもの好きではないと手を出さない一枚であり、更に、遠くから見ると無地、近づくと(近づくのが怖いですが)模様が分かる、というあたりも江戸時代に生まれた男子の美意識そのものと言って良いでしょう。

更に、昨年の初詣には、茶色の羽織+長着の一揃いで↓

更に更に、藍色の格子柄の羽織+長着も持っているようで、これもなかなか相当のきもの好きでないと買わない一揃いであると思います↓
http://livedoor.blogimg.jp/imanishinoriyuki/imgs/5/f/5f2e1b51.jpg
素材は張り感や独特の光沢感から、恐らく大島と思われますが、フラッシュのせいかも知れません。が、こちらの羽織では、羽織紐に、石を使うタイプの無双型を付けていて、反対に、一つ前の初詣の一揃いでは結ぶ型のものを使用。きものの格に合わせて羽織紐にも注意を払っているようで、やはり大島のように思えます。
とにかく羽織紐を色々試しているあたり、相当なきもの好きなのでしょう。藍色の格子の大島も、生半可なきもの好きには手が出せない一枚です。半衿は常に白で、きものに合わせて様々な色を楽しむ男性が多い中、強いこだわりを持っているようです。

司組長の帯が異様に太い‥!
…と、このようにファッションチェックをしていると、非常に気になる着姿に出会いました。
下は、何と組長がカラオケをしているレアな動画なのですが‥(ちなみに歌はプロ並み)↓

よく見ると、帯が異様に太くないでしょうか?普通、男性の場合、角帯か兵児帯を締めますが、どちらもこの半分くらいの太さのはずです。司組長のこの帯は女性の帯と同じくらいか、もしかしたら更に太幅かも知れません。巻き方でこうなっているのではなく、どうも元々この太さに織っているように見えます。このような太い帯を締めている男性は私は見たことがなく、非常に特異と感じました。
そこで、もしかしたらこれは極道に特有の帯なのかしら?と明治から現在に至るまで様々に画像検索してみましたが、皆さんごく普通の角帯を締めているようです。するとこれは司組長の特別なこだわりなのでしょうか?
しかし、虚心坦懐にもう一度先ほど掲げた大島の画像を見てみると、司組長の向かって右側を歩く最高幹部の帯も、同じくらい太いようです↓
http://livedoor.blogimg.jp/imanishinoriyuki/imgs/5/f/5f2e1b51.jpg
と言うことは、もしやこれは、山口組最高幹部の文化なのか?はたまた司忍六代目側近の間だけでの流行なのか?
よく見ると、この写真の司組長の帯は、普通の角帯よりは太幅。しかし先の演歌の時の白い帯や、隣りの幹部よりは狭い幅のようです。これもなかなかに独特です。非常に興味深い。

ともかく、最も太幅の場合、何となく、さらしを巻いた姿を想像させる幅であり、ここに侠客の美学を表現しているのか‥とも思いましたが、総ては推測です。きものライターとしては本当のところを聞いてみたいところですが、もちろん山口組に知り合いなどいる訳がありません。きもの探究のためには日本中どこへでも出掛けて行く、時々編集部などでお会いする朝香沙都子さんに聞きに行ってもらいたいけれどw(私は怖いから行きたくない)、もちろん朝香さんも行かないですよね。
いっそ私が山口組のホームページに質問をしてみる?とも思いましたが(ホームページがちゃんとあるんです。とても丁寧な言葉遣いで驚きます)、この非常時にこんな呑気な質問に関わっているヒマがある訳ないですよね。

しかし、恐らく私が日本で一番熱心に司組長のきものを分析してみたハズ。いつかこの謎が解ける日があることを願います。もちろん暴力団を肯定する気など毛頭ありませんが、そもそも現在のきものの中には、江戸初期に“かぶき者”と言われた社会のつまはじき者たちに淵源をもつ要素が多々含まれています。常にきもの全体に関心を持つ者としては、現象として、現在のヤクザの中でどのようにきものが着られ、継承されているのか、とても気になるのです。

襲名式には黒紋付きで

…と一応学問的にもまとめてみたところで、更に様々な映像を見て行くと、司組長の六代目継承式の動画を発見しました↓

こういう時は、もちろん、黒紋付き袴の男子の正装姿なのですね。
司組長もさることながら、ナンバー2である高山若頭が、片目がつぶれていて異様な迫力です。映像開始後すぐに出て来るので、ゼヒご覧になってみてください。
更に続いて出て来る、居並ぶ有力組長の皆さん。明治の元勲のような組長もいれば、何か画家のようなおかっぱ頭の組長もいたりで、我々が抱きがちなヤクザのステレオタイプがいかにイメージ貧困であるかを思い知らされます。

茶道にも通じる極道の儀式作法

そして、適当に上の画像のカーソルを進めて頂くと固めの盃の場面が出て来るのですが、これが、茶道や包丁道にも通ずる伝統の所作の数々。我々の預かり知らないところで、これはこれで日本の美学が綿々と受け継がれていることを知りました。
更に下の動画は、一つ前の五代目組長の襲名式の際のものなのですが、9分45秒過ぎ頃から続々と会場に入って行く幹部たちの姿は、茶道の「席入り」を髣髴とさせます↓

式の間、それぞれの組長はしっかりと扇子を要を右に向けて膝前に置いて座っており、この辺りも正に茶道と通じる作法。非常に興味深く見入りました。


リアル極道の妻の正装姿!
更に下の動画では、本物のヤクザの姐さんが登場します。1分31秒あたりから、ご覧ください。

病死した三代目の跡目を継ぐ四代目の継承式で、三代目の代理として、妻である田岡文子姐さんが固めの盃を呑みます。この時、着ているのは黒留袖。白の比翼付き。なるほど、こういう時はやはり姐さんも女子の第一礼装なのね、とこれも大変に興味深い。
映像が荒れていてよく柄が分かりませんが、帯は白地のものを締めています。金銀糸が入っているのか、どうなのか?
留袖の柄も映してほしいところなのに、恐らく男性のカメラマンにはそんな気の利いたことは出来る訳なく、これも残念ながらよく分かりません。青の柄が入っているようにも見えるのですが、もしかしたら松か波を描いたものか‥?確かに鳳凰や鴛鴦の柄では何だか襲名式の場にはそぐわないですよね。私が姐さんでも松や波濤などの柄にすると思います。それにしても本物のヤクザの姐さん、とてつもない迫力です。

…と、近頃は原稿が書けない時の逃避活動として、山口組ファッションチェックが格好の素材となった私でありました。結論として、司組長のきものファッションは非常に上質で通好み。しかしもしかしたら羽織裏や襦袢にはものすごい龍の絵やエロチックな浮世絵などが描かれているのか?そして謎の太幅帯がやはり気になります!!!

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