西端真矢

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出版社の創業百周年パーティーへ、祖母作の露草柄の訪問着で 2016/05/14



一昨日、私がよくお仕事をさせて頂いている出版社「雄山閣」の創業百周年パーティーにご招待を受けました。
「雄山閣」は、歴史、考古学分野、また、歌舞伎や茶道、刀剣などの日本伝統文化分野に強い専門出版社で、大正五
(1916)年に創業され、今年でちょうど百周年を迎えます。その間、関東大震災、戦争、そしてバブル崩壊の荒波を乗り越えての事業継続。それもベストセラー狙いではなく、地味で時に難解でもある専門書を出し続けて百周年を迎えるというのは、本当に素晴らしいことだと思います。
今、私が書いているノンフィクション小説は、この百周年の記念事業の一環として、創業から現在に至るまで「雄山閣」に関わった人々の波乱万丈を描く群像劇なのです。皆様ぜひご期待頂けたらと存じます。

その記念パーティーの会場は、飯田橋にある「ホテルメトロポリタンエドモント」。料理に定評のあるホテルで、確かに味付けは正統的でしっかりと腰が据わったかんじで、けれど個性もあり、とても美味しく頂きました。
そして、こういったパーティーは、とかく言葉だけが美しくお義理な空気がただようことも多々あるかと思いますが、昨日の会は、いい時代も悪い時代も真に「雄山閣」とともに歩まれて来た名物編集者の方々、雄山閣から学界のスタンダードとなるような名著を出版された考古学、史学、歌舞伎研究、茶道、生活史研究の錚々たる先生方、現役の先生方、そして出版を蔭から支える製本会社や印刷会社の方々が集まり、謂わば「雄山閣と仲間たち」といった温かい空気が流れているとても良いパーティーでした。この方々にご満足頂けるような本にしなければならないと、身が引き締まる思い他致しました。
会場の一角に並べられた、百年間の代表的な出版物(上)と現在の最新出版物(下)が、過去と今とを物語っています↓
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     *

さて、私のきものは、もちろんお祝いの席ですから訪問着で伺いました。帯も、金銀糸の入った丸紋の袋帯で、華やかに祝意を表して↓
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きものは祖母の作品で、恐らく露草ではないかと思われる花を型染めしています。下の写真が裾模様を床置きして撮ったものなのですが‥(携帯カメラの露出の関係から、写真に若干赤みが乗っています)↓
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露草は本来、青、紫、白の花しか咲かないもの。そこを敢えてオレンジ色にも染め、祖母の想像の世界での露草にしています。よく見ると、一本一本の茎や葉の緑を、一本の中でかなり細かく何種類にも濃淡をつけて染めていることが分かります。このあたり、孫ながら「いい仕事してますねえ」と言いたくなります。
FBの方に、柄付けの一部の写真を先行で載せてみたところ、きもの友だちの方から、「今の訪問着は決まり切った柄付けが多い中、個性があって楽しい」といった内容のコメントを頂きました。
これは大変に鋭いご意見で、私の祖母は、もともとはただのきもの好きの主婦。絵を描くことが好きで、たまたま芹沢門下の教室に知己があったことから型染を始めました。
だから、根っからの染め職人さんとはちょっと感覚が違って、型の置き方や色の選び方にどこか定式とは違う自由なところがあると思います。それでも、年に何回か、所属する会が松屋で展示販売会をしているので出品もしていましたし、個人でも注文を受けていたので、商品として染めることもしていたのですが、この訪問着は母と私のためにと染めてくれたもの。「売れるかどうか」などと考える必要はなく、自由に好きなように染めています。その自由な心はやはり人に伝わるのかも知れないなと思いました。

帯周りはこんな風に↓
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帯〆を白にして礼装感を上げ、帯揚げはやや自由に、「ゑり正」の濃い紫色の輪出し絞りにして個性を出してみました。この帯揚げの選択については、母から、ごく淡い紫色の綸子地か、白の綸子地のものの方がいいんじゃないの?とぶつぶつ批判が出ましたが、さて皆さんはどう思われるでしょうか?きものコーディネイト、こういった細かいところで意見が分かれるものですよね。

足元を撮った写真もご紹介↓
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右手に少しだけ写っている紺色の布は、薄物の羽織です。母の知人のお母様の遺品を頂いたもので、絞り染めで出来る目結模様を織りで表したと思われる、面白い柄行き。‥って、この写真では分かりにくいですね。今後この羽織にフォーカスした写真もご紹介出来たらと思います。
草履は、「神田胡蝶」。真っ白のエナメル草履って無条件に大好きなのです。「胡蝶履き」のシルエットと足の収まりのかんじは今日もやはりほっそりとエレガントで○。

それにしても、訪問着での外出はやはり気分が上がります。スピーチがあまり上手くまとまらなかったことだけがやや心残りで、一人反省会をしている真面目人間の私です‥


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