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© 2011 Maya Nishihata
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雪と介護、母の入院 2019/02/10
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東京に今年最初の雪が降った今日、母が入院した。
もともと二つの大きな持病を抱え、それに加えてこの数年は、まだら状にゆっくりと認知症が進みつつあり、更に重度の外反母趾などの原因から歩行にも困難が多く‥と、満身創痍の母なのだけれど、先々週の持病の発作から肺の感染症にかかってしまい、今日、入院が決まった。
ちょうど介護認定を受けようとしていた矢先のことで、猫のチャミはしょんぼり寂しがっているし、もちろん、私も父も心細げな母を病室に残して帰宅する時は胸が痛んだけれど、反面、ほっとしてもいる。
これからしばらくの間、おそらく一週間か十日ほどは、夜の間の失禁の心配をしなくて良いし、仕事の取材から帰宅した後の母の夕食の段取りも考えなくて良いし、大人のおむつを山と抱えながらその他の買い物でもバッグを膨らませて道を歩かなくても良いし、仕事の原稿を中断してトイレに付き添う必要もない。
帰宅が遅くなる日に順列組み合わせ的に複雑な青や白や赤のロゴが書かれた薬を間違いなく揃えて「夕飯の後はこれを飲んでね」と言い聞かせてから出かける必要も、ない。(しかし折角間違いなく並べて出たのにきっぱり飲み忘れられている日はさすがに泣けて来る)‥‥
介護とは、つまり排泄である。
糞尿との格闘である。
人間の尊厳は足腰に多くを負っている。
‥‥ということを嫌と言うほど噛みしめさせられているこの頃、しばらくは排泄のことはきっぱり忘れて、病院に任せて良いのだ。もちろん食事も、薬のことも任せて良いのだし、何しろ面会時間が限られているのだから、その時間を外れれば私に出来ることは何もないのだ。本当にないのだ。ぐっすり眠って良いのだ‥‥
それも、まれに見るほど取材やら〆切やらビジネスディナーやら打ち合わせやらが立て込んでいて、一体この介護という難業とどうやり繰りするのか考えただけで胸がドキドキしていたここからの十日ほどの、ちょうどその期間にぴったり収まるような具合に入院が決まったのは、ごくごく淡い今日の雪と同様、天からの敢闘賞的どっきりプレゼントなのか、それともふだんあまり気が利くとは言えない母からの、珍しく最高に気の利いた贈り物なのか‥‥
帰宅して久し振りに静かに落ち着いた夜を過ごし、庭に出るともう雪はやんでいて、空気は少し暖かかった。