西端真矢

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一日一日 2020/11/17



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この二週間ほど、とても難しい、大きな仕事が重なって緊張が続き、一段落したらほっとして廃人になってしまった。
やっとこちら側に戻って来て、まずはきものでリハビリを、などと称して最近父の知り合いの方がまとまって譲ってくださった手の込んだきものや帯の中でも特に好みの何枚かを広げてうっとりと眺めていると(写真の緑地の帯と絞りのきもの、濃い紫地にぽつぽつと模様が散ったきもの)、ふと、母が以前購入して、なかなか素敵なのだけれど手持ちのきものに合うものがなかった帯と、よく合いそうだと気づきほくほくしたりする。

庭を見れば、いつの間にかツワブキが強い黄色の花をあちこちで開いていて、我が家にやって来る野良猫の中でもご飯くださーい!ご飯くださーい!と鳴く声が歴代最高にギャーギャーうるさく“ギャー子”と名づけた灰色の猫がうとうととまるで我が家の猫ですという風情で日向ぼっこをしている。肩をすくめて部屋に戻ると正真正銘の我が家の猫チャミも私のベッドの日差しの領分で昼寝をしていて、私が近づいて声をかけてもすぐまた目を閉じてしまうのだった。

世間ではコロナウイルスが三度目の流行に入り、でも、肺がん持ちの母を家に抱える私は仕事の打ち合わせと取材、書の稽古、日々の買い物。あとはたまに美術館に行くぐらいでそもそもほとんど出かけていないから、生活はこの十か月間と何も変わらない。
その母は、認知症が進んで一緒に語り合える思い出は波に侵食されてやがて消えてゆくて小さな島のように日々その土地を失ってゆき、そして、精密検査によればがんは確実に体中に散らばりを見せている。命の尽きる日もそう遠くないことを思い知らされる。
それでも、一日一日を、ただ生きている。私も、母も。ツワブキに蝶がとまり庭の上の空を太陽がゆっくりと動いてゆく。