西端真矢

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クロワッサン「着物の時間」、華道「真生流」副家元 山根奈津子さんの着物物語を取材しました 2023/12/30



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今年最後の投稿は、最新のお仕事のご紹介です。
マガジンハウス「クロワッサン」誌での連載「着物の時間」にて、今月は華道「真生流」副家元 山根奈津子さんの着物物語を取材しました。
実は、真生流は、私が生け花を学んだ流派です(腕が錆びつきまくっていますが一応師範免状も持っております)。大学時代から中学留学へ出る直前の27歳頃まで、家元教場で学んだのですが、その頃、奈津子さんは小学生から中学生へと成長される少女時代。晃華学園のグレーの制服を着て、学校から帰宅すると私たちと並んで稽古に参加していました。小さな手で鋏を持つあどけない〝奈津子ちゃん〟の姿が今も私の目に焼きついています。
そんな奈津子さんがこれほどに美しい女性に成長されて、そして何より、おおらかさと品格をたたえた素晴らしい花を生けられ、家元の由美先生とともに流儀を引っ張っていらっしゃる。作品を拝見するたびにいつも私は胸がいっぱいになってしまい、完全に親戚のおばさんの心情なのですが‥‥。
しかし‥‥取材にはしっかりと臨みました。何しろ山根家は膨大な着物コレクションで知られます。その一部は「婦人画報」「美しいキモノ」誌などでたびたび披露されており、私もいつか取材したいと念願していました。
当日は、生け花と着物には共通点が多いと感じているというお話や、色にまつわるお話を中心に、着物とご自身の関わりを語って頂きました。ぜひご高覧頂けましたら幸いです。
そして、奈津子さんは、1月2日から14日、東京国立博物館「博物館で初もうで」展にて、正面玄関や本館大階段ロビーに由美家元ともに大作を披露されます。ぜひ足を運ばれてみてください。

一周忌 2023/12/27



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少し前のことになるが、十月半ばに母の一周忌を迎えた。
その日は何も予定を入れず、近所に買い物にさえ出かけず、家で猫と静かに過ごした。毎年この時期は我が家の庭には咲いている花がなく、唯一、芙蓉の木が花をつけているのだけれど、今年も同じようにたくさんの花をつけていて、見ていると、亡くなった日のまだこれは夢なのではないかと信じたい気持ちと、もう本当に終わってしまったのだとあきらめ認めている気持ちと、そのどちらもがない交ぜになった、混乱したあの日の自分が再び帰って来たようだった。

一年が過ぎて、悲しみが薄らいだかと言えばそのようなことはなく、何かスープなどを煮詰めていくとおりがたまる、そのおりの中に閉じ込められて毎日を生きているように感じる。
私の場合は特に母が認知症になってしまったことが何よりもつらかったから、その苦しさがいつも悲しみの中枢にある。
どうしてなんだろう?どうしてママが認知症にならなきゃいけなかったのだろう?――もちろんそんなことを考えてもどうしようもないことは理解しているのだけれど、それでもまた同じことを考え思考が堂々めぐりする。生きるということは、きれいに割り切れることだけで成り立っている訳ではなく、割り切れないことを割り切れるとこじつける偽善が私は何より嫌いだから、ただ、その悲しみをじっと感じて立っている。そんな一年だった。

芙蓉を見上げていたら、足もとにいつの間にか小さな黄色い蝶が飛んで来ていて、もしかしたら母が来てくれたのだろうか、などと思ったりもする。
久し振りに写真を撮りたくなって、もちろんそんな時はスマートフォンでもなくデジタルカメラでもなくフィルムで撮りたいのだから、ジェラルミンケースから古いニコンFM3Aを引っ張り出してみたりもした。以前は特に好きでも嫌いでもなかった芙蓉の花が、いつの間にか好きな花になっていた。
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「美しいキモノ」連載「美の在り処」今号は「帯源」さんを訪ねました。 2023/12/08



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「美しいキモノ」での連載「西端真矢が訪ねる 美の在り処」、病気治療のため休載していましたが、再開致しました。
今号で訪ねたのは、浅草の老舗「帯源」さん。長年取材してみたいと思っていたお店で、今回、私から編集部に強く提案して取材が実現しました。

帯源さんと言えば、男物の博多織角帯「鬼献上」で有名です。
「鬼献」の愛称で親しまれ、私も歌舞伎、日本舞踊、邦楽など伝統芸能分野の方々、また、東京の老舗の旦那衆の取材で「鬼献は別格」「毎年一本は買っている」などという言葉を何度も耳にして来ました。

一体何がそれほど良いのだろう? 他の博多角帯と何が違うのだろう?
そのような素朴な疑問を解き明かしたいと武者震いで浅草に向かい、店主の高橋宣任さんと対話を繰り返す中で、今回史上初めて鬼献誕生の原点までたどり着くことが出来ました。これは近現代服飾史において一つの大きな成果になったと自負しています。

今回の原稿をとても気に入っています。
それは、上記したような服飾史上の成果に加え、この連載で探し当てようとしていること、名店と言われる店々の好み、美意識は土地の美意識と不可分に結びついているはずだ――という、実は連載当初から持っていた問題意識を特にはっきりと文章に刻むことが出来たからです。

浅草という江戸時代以来の特異な街。いや、本当はどの街もみな特異で、それぞれの成り立ちを持っている。その中からまるで麹が醗酵するように知らず知らずと育まれて来た好みを具現化出来た店こそが、名店と言われるようになるのだ――
そのようなパースペクティブを、この連載ではこれからも追究していけたらと願っています。
今回は、文体も、本来の私自身の文体よりもほんの少しシャキっと歯切れ良い下町風に寄せて書くことを試みました。どうかそんなところもお楽しみ頂けましたら幸いです。