西端真矢

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母を偲ぶ会(二)記念の品 2024/03/28



母を偲ぶ会では、参加くださった皆様に記念の品を差し上げた。
一つは大倉陶園の小皿で、もう一つは、特別に誂えた上生菓子。
どちらも母を思い出して頂くよすがとなるよう、母にちなんだ意匠のものを準備した。
元来、私は、何かしらの会の趣旨に添って記念品を準備する、という行為が好きだ。それはおそらくそこに〝ストーリーを考える〟という要素があるからなのだと思う。今回のストーリーを見て頂けたらと思う。  
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小皿は、大倉陶園の定番模様の一つである「プチ・ローズ」シリーズから択んだ。直径15センチほどで、チョコレートなどの小さなお菓子や、食事で使うのなら、オードブルなど小さなおつまみを載せるのに適していると思う。女性の方だったらアクセサリー置きにするのも良いかも知れないと思って択んだ。こちらを二枚組にして差し上げた。
プチ・ローズを択んだのは、母が、この柄のモーニングカップで毎朝ミルクコーヒーを飲んでいたからだ。上の写真の右側に写っているのがそのカップで、二十年近く使っていたから、よく見るとカップの縁にほどこされていた金が剥げてしまっている。
左側の、今回用意したお皿には、もちろん金がきれいに載っている。この日の会に参加頂いた方々は特に母と親しかった方ばかりで、お酒好きの方も甘いもの好きの方もいらっしゃるから、時々母を思い出して使って頂けたらいいなと思っている。
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ところで、このお皿を、今回は日本橋の三越で発注したのだけれど、ちょっと感動したことがあった。
店員の方に会の趣旨を説明すると、「では、包装紙は青色のもの、お持ち帰り用の紙袋も黒一色のものに致しましょう」と提案頂いたのだ。
三越の包み紙と言えば、ピンクがかった強いレッドの、水玉のような気泡のような抽象模様が紙いっぱいに飛び跳ねているあのデザインが思い浮かぶ。日本人なら誰でも目にしたことがある包装紙だろう。その青色版があるということを、今回初めて知った。慶弔の弔の用途の品を包む時のために、静かな青色バージョンがちゃんと用意されているのだ。
それは、平成になって登場した森口邦彦デザインの紙袋も同様で、本来は規則的に点在する赤の四角模様が黒で表現され、全体がモノトーンとなっている。いかにも日本人らしい、老舗のこんな心配りにはぐっと来てしまう。
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そして、もう一つの記念の品の和菓子は、この数年大変親しくしている、地元吉祥寺の茶の湯菓子店「亀屋萬年堂」さんで誂えた。
〝茶の湯菓子店〟とは、文字通り、茶席の菓子だけを専門に作る菓子店のことで、店舗は持たず、茶会の亭主の相談を受け、会の趣旨に沿ったその日一日のためだけの菓子を作る。当日茶会の水屋まで届けてくれるのだ。
亀屋さんは、ルーツは京都で、明治維新とともに東京へやって来た。飯田橋と銀座にもまったく同じ名の亀屋萬年堂という店があるが、東京移転以後に分かれた親戚だとのこと。このような筋目正しいお店が地元にあるのは何てありがたいことだろう!今回のお菓子も、ぜひとも亀屋さんで誂えたいと思ったのだ。
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出来上がったお菓子は、二つ。素晴らしい意匠に作って頂き、食べるのが惜しいくらいだった。
まず、右の練切は、黒い薔薇の花をかたどったもの。
母の結婚二年目の年、吉祥寺の今の家を建てた時、遠縁の大叔母がお祝いにと黒薔薇の苗をプレゼントしてくれた。その苗をフェンスにからませて育て、母は自分の花と見なしてとても大切にしていた。大好きだった宝塚の機関誌に劇評を投稿する時のペンネームも「黒薔薇」だった。
だから、和菓子にしてはなかなか異例の意匠ではあるけれど、どうしても黒薔薇の練切にしたくて、おそるおそるご主人の長野祐治さんに相談してみた。快く引き受けてくださって、上生菓子作りの担当は長男の貴弘さんだから、現代の感覚もどこかにただよわせながら、品格高く、美しく仕上げてくださった。お味もこくがありつつも控えめな甘さで、本当に、すべてが素晴らしい出来栄え。大変大変嬉しかった。

もう一つ、左の薯蕷饅頭には、蝶の焼き型を押して頂いた。日本には古くから蝶を死者の使いとみなす考え方があるから、大事にしていた黒薔薇の傍らに母がやって来た‥‥というストーリーをつむいでみたのだ。
プチ・ローズのゆかりとも合わせ、そんなことをつらつらとまとめたお手紙もお付けして、会の最後に、皆様にお渡しした。皆様のためにお作りしたものだけれど、その準備の過程を私が一番楽しんだと思う。なかなかいいじゃない、これなら私の面目も立ったわ、と空の上で母が言っていてくれているならいいなと思う。美しいものが大好きな母だったから。