西端真矢

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母を偲ぶ会(三)当日のきもの篇 2024/04/10



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母を偲ぶ会には、きもので参加した。
母がとても気に入っていた、紬地の訪問着。「しょうざん」生紬の更紗模様シリーズの一枚で、母はこのシリーズが大好きで、単衣の訪問着も持っている。今回の会は立食パーティー形式だったので、ドレスコードとしてもピッタリだと思いこちらを択んだ。
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上の写真は、きものに寄ったもの。
遠くからは無地に見える地の部分には、ろうけつ染で淡い水色の氷割れ模様が施されている。
その氷割れの場に、型染で小ぶりの更紗模様が表されている。墨色一色で、すっきりとまとめいるところがいい。水色×黒もとても好きな組み合わせだ。洋服ではあまりしない組み合わせだけれど、きものではとても映える。浮世絵中に時々見かけることがあり、隠れた日本的配色なのではないかと思っている。

帯は、洛風林の格子模様の袋帯を合わせた。
これまでは紺色地の帯を合わせていてそれも悪くはないのだけれど、格子の帯ならよりしゃれた姿になるのではと思っていた。それで、数カ月探してやっとこの帯を見つけた。水色×茶色も大好きな配色だ。やはり日本的な配色だと思っている。
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さて、このきものと帯に、どんな帯締めを入れるか。
実は、帯を入手した時最初にぱっと思い浮かんだのは、上の写真のような焦げ茶系の帯締めだった。これで全体がきりっと引き締まる。道明の冠組にこんな色がないかしらと思って訪ねてみると、ちゃんとあったので購入した。皀色(くりいろ)という色だ。
‥‥しかし、上の写真の通り、まだ封を切っていない。当日は別の帯締めを入れた。それが下の写真の一本で、桜色から水色への段染めの冠組↓
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実は、こちらは、母が古希を迎えた時、研究者仲間の皆様がお祝いで下さったもの。母は大喜びだった。お葬式の時、お棺に入れようかなとさえ思ったのだけれど、まだとてもきれいな染織品をこの世から消してしまうことが忍びず、私が使い続けることにした。今回の偲ぶ会には、その古希の際の皆様が全員参加されているので、ぜひお見せしたいとこちらを締めることにしたのだ。
帯揚げは、少しくすみのある玉子色の一枚。「美しいキモノ」の連載での取材の記念にと、「むら田」のあき子さんから頂いた。あき子さんが手づから板締めで染めたもので、絞りの白い線がアクセントになっている。
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↑ところで、上の写真は、今回着た襦袢。一般的な襦袢ではなく、紐を使わないシャツワンピース型で、衿がマジックテープ式になっている。
昨年夏の子宮卵巣摘出手術後、どうも内臓の位置が安定せず、年初に半年ぶりにきものを着た時、紐類の締めつけのせいか、帰り道にとてつもなく気分が悪くなってしまった。
更に二月上旬からは大腸付近に強い痛みが出るようになり、実は、腸のCTスキャンと胃カメラの検査を受けていた(その結果はまた後日の投稿にて)。
それでも、今回、どうしても母のきもので参加したかった。それでとにかく紐を一本でも減らそうと、この襦袢にたどり着いたのだ。「くるり」の商品で、「衿秀」の「きらっく」の替え袖を取り寄せてざくざくと縫い付けている(下の写真)↓
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ちなみに、もともとの衿がどうも安っぽくて気に入らず、仲良しの着付け師 奥泉智恵さんに依頼して、上から絹の半衿を掛けてもらってもいる。(マジックテープを避けて縫うことが、不器用No1の私には逆立ちしても無理だったため)

さて、これで腹部を最も強く締めつける襦袢の紐をなくすことが出来た。更に腰紐も完全に腰骨の上で締めれば、内臓にかかる負担は限りなく少なくなる。
しかし、その新しい着付けを、自分一人で、しかも会に間に合うように仕上げられる自信が、ない‥!それで友人の吉田雪乃さんに助けを求めることにした。
きもの好きの方ならご存じの通り、雪乃さんは、きものの色合わせ診断を中心に、着付け、草木染、和の化粧など、きもの周りの様々な学びと体験とを提供する「伝統色彩士協会」を主宰している。会員には着付け師さんもいらっしゃるので、どなたか派遣してもらえないかと依頼したのだ。
当日は雪乃さんの一番弟子の一人という川口恵美子さんが来て下さった。ふだん私はほとんど補正を入れないのだけれど、一目体型を見るなり、
「腰回りにタオルを入れてくびれをなくしましょう。その方が帯を柔らかく締めることが出来ますから」
と、てきぱきとタオル4枚で補正を当ててくれた。そしてほとんど締めつけのない、けれどすっきりとした姿に着付けて下さった。
その間わずか30分ほど。たぶん川口さんにとっては、着付け師人生で一番くらいの〝ゆる着付け〟だったと思う。それでも帰宅まで4時間余りの間、まったく着崩れることもなく、そして体調も何一つ問題なく、大切な大切な会を無事に、楽しく過ごすことが出来た。どんなに感謝しても感謝し切れない。
そして、今回、新しい着付け法で無事に過ごせたことで、再びきものを着られるという希望が見えて来た。もちろん、新着付けを身につけるためにはたくさんの練習が必要だ。でも、こんな千本ノックならむしろ楽しい。同じ悩みを持つ人のためにも、いずれレポートしたいと思う。