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国宝ハラスメント (2025/06/22 )
クロワッサン「着物の時間」中田クルミさんを取材しました (2025/06/16 )
ようやくきもので電車外出~~アトリエ花傳 展示会へ (2025/06/07 )
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術後二年 2025/06/30
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今日は朝から杏林大学病院へ。
子宮がん手術から2年目の“造影剤CT”というわりと重めの、精密な検査を受ける。
右腕から点滴で造影剤が注入されると、身体が燃えるように熱くなる。そのまま寝台が動きCTに入る。なす術もなく自分がモルモットになっていく瞬間。
検査後、画像診断の結果が出るまで1時間待ち、診察へ。
無事、転移はないこと、3カ月前に子宮跡地付近から採った細胞検査にも異常はなく、再発はないことが確認出来た。
いつもクールな主治医の先生もちょっと嬉しそうで、私も嬉しくなる。
1階のロビーには、3メートルはありそうな大きな笹の木が立てられていた。
色とりどりの短冊がぶら下がっているから読んでみる。(院内は撮影禁止なので写真はなし)
◯◯ちゃんの背骨が真っすぐになりますように
赤ちゃんが出来ますように
オストメイトを上手く使えるようになりますように
科の患者さんが早く良くなりますように 救急センター看護師一同
⋯⋯ここの短冊はどれも具体的で切実だ。
中でも一行だけ、どこか弱々しい字で、
お父さんが良くなりますように
と書かれた短冊が胸を打つ。
ともかく2年を生き延びたのだ。
あの日と同じ、真夏の日差しが当たる病棟を後にする。
国宝ハラスメント 2025/06/22
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最近、ハラスメントを受けている。
私はそれを〝国宝ハラスメント〟と名づけてみた。
そう、映画『国宝』が巻き起こしている熱狂のことである。
朝、SNSを開くと、インスタグラム、フェイスブックのタイムラインに『国宝』の感想がずらずら並んでいる。しかもすべてが長文だ。誰かに感動を伝えずにはいられない。いてもたってもいられない。そんな思いが携帯の狭い画面に、白い行間にほとばしっている。
仕事や会合へ出かければ、もう観たか、観ないかが話題に上る。上映開始からまだ二週間ほどしか経っていないのに、既に二回観ている人もちらほらいることに驚かされる。観ていない人も、「来週予約してるの」「明日行くんだ♪」と楽しそうだ。
更にラインやメッセンジャーに、真矢さんはもう観た?今日時間出来たからふらっと行こうかと思うんだけど、などと連絡が来る。
どこまでもどこまでも『国宝』である。
私は仕事柄、日本舞踊や長唄の本職の方、また、年間ほとんどすべての演目を観ているような歌舞伎通の方々とも仲良くさせて頂いているが、彼らもみなSNSに思いをつづっている。もちろん、長文で。よほど素晴らしい作品なのだろう。
*
そんな『国宝』を、私もすぐさま観に行きたいと思う。なのに、行くことが出来ない。
約二年前の手術の後遺症で、腸の位置がどうにも定まらず、長時間同じ姿勢で座っていることが難しいためだ。
途中で気分が悪くなって倒れたりする可能性が考えられ、二の足を踏んでしまう。
手術後、一本だけ、映画を見に行った。
その時は事前に映画館に電話をかけて混みぐあいを訊ね、ガラガラだと分かった上で、更に、いつでも外に出られるように出口のすぐ横の席に座った安心感で無事に過ごすことが出来た。しかも上映時間は『国宝』の半分ほどだった。
『国宝』の3時間という長尺。更に全席満員で身動きが取れない状況。健常者ではない私にはあまりにもハードルが高い。
すいて来たら行こう、と悲しくため息をついていたが、ふだん映画を観ない層も詰めかけている上に、二回、三回と観る人もいることを考えると、すいて来るのは秋頃だろうか。泣きたくなってしまう。
もう私に『国宝』の話はしないで!こんなの国宝ハラスメントだよ!映倫に?訴えるぞー!
‥‥とヒステリーを起こしていたが、先週、取材の現場で会ったヘアメイクさんに「プレミアムシートで観ればいいんだよ」と教えてもらった。
すっかり時流に乗り遅れていてその存在を知らなかったのだけれど、主要駅の旗艦映画館に、一席7千円~1万円ほどで広々ふかふかのソファ席、リクライニング自由、しかもオットマン付きという豪華シートが用意されているのだそうだ。
これなら姿勢が変えられるし、特に私にとっては、オットマンが何よりありがたい。
手術の際に腹部のリンパ節を取っていて、そのせいで脚のリンパ液の流れがとどこおりがちになり、足をただ下げたまま自由に動かせない状態で長時間座っていると、非常に重だるくなってしまう。その重だるさが姿勢に影響して、その影響が腸に響いて大不調を起こす。
リクライニングソファ+オットマンなら、この現象を回避出来る可能性は、限りなく高い。
*
こうして『国宝』鑑賞に希望が見えて来た。
映画一本に1万円とは、富豪ではない私の感覚では鼻血ものだけれど、どうしても熱狂と同時進行に観たいのだ。配信ではなく、映画館の大きなスクリーンで。一番安心なのは3万円の個室貸し切りだけれど、さすがにそれはやめておこう。
プレミアムシートやスーパープレミアムシートには専用ラウンジがあり、上映前には夜景など見てくつろぐことが出来るらしい。都内どこかのプレミアムラウンジにたたずむ私を見かけても、けっ!キラキラリア充アピールか、などと罵らないでほしい。港区女子的ギラつき感ゼロ、決死の努力でたどりついた私がそこにいるのだから。
クロワッサン「着物の時間」中田クルミさんを取材しました 2025/06/16
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マガジンハウス「クロワッサン」誌での連載「着物の時間」、今月は俳優の中田クルミさんの着物物語を取材しました。
ご夫君の浅野忠信さんのエミー賞、グラミー賞ノミネートにともない、妻として、ともにハリウッドのレッドカーペットを歩いた中田さん。その際の着物が大きく話題になったことを見逃さず、早速お話を伺って来ました。
明るくお話上手で、たぶんクラブカルチャーにも親和性のある方で、何を隠そう私も元クラブキッズのため、とても波長が合い、楽しい取材になりました。
その気分を反映してリズム感を持った文章で、中田さんと着物との関わりをまとめています。キーワードは〝京都着物短期留学〟。ぜひご高覧ください。
ようやくきもので電車外出~~アトリエ花傳 展示会へ 2025/06/07
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木曜日は〝きもので電車に乗り、2時間ほどレセプションに参加して帰宅する〟という、まだ手術の後遺症から回復途上の私にとっては一大事業を成し遂げた。
出かけたのは、観世あすかさんが手がけるバッグブランド『アトリエ花傳』展示会レセプション。
古美術商でもあるあすかさんが手掛けるすべて一点物のバッグは、龍村平蔵の錦織、浦野理一の端切れ(パッチワーク使い)、道明による正倉院御物復原の組紐裂、フランス・リヨンのグログラン生地、能装束の古裂、当代随一の手芸作家・下田直子さんのビーズ作品‥‥などなど、美しいということのみならず、強い個性を備えた布を用い、それらをあすかさんが卓越した美意識によってバッグという形式にまとめあげている。
https://www.fujingaho.jp/uts-kimono/shop/g35549313/atelier-kaden-bags-210223/
私は数年前に↑上記URLの『美しいキモノ』の記事で取材させて頂いて以来、心奪われ、後日、自分でも、下の写真の下田直子さんのビーズレースを主役に据えたバッグをお迎えした。
ビーズレースの美しさ、藤色×焦げ茶色の配色。心をつかまれる要素ばかりで、こうして私のギャラはすべてきもの周りに吸い取られていく‥‥そのバッグを、母の介護、そして闘病が続き引きこもって暮らしていたために使う機会も得られずにいたのだけれど、今回、初めて手にして外出することが出来た。
会場で、あすかさん、そして道明三保子先生と↓
何しろバッグが主役の日なのだから、今回は最愛のこのバッグを引き立たせるコーディネイトを心がけた。玉子色の蛍ぼかしの堅絽小紋に、河合康幸さんの紗の網代格子袋帯。
蛍ぼかしは染めで表すことが多いけれど、こちらは手絞りで表現したもの。玉子色が好きで、訪問着、真綿紬、単衣大島と持っているのに、また気づくと買っている。
そして格子模様も大好きで、この袋帯もごく最近、一目惚れで買ってしまった初下ろし。色彩の絶妙な配色と、金糸ではなく銀糸を使っているところもとても好みで。
帯揚げは紗。一部に入った紫色を、全体のわずかな差し色に、と択んだ。
帯締めは、道明の笹浪組。以前、道明先生に頂いたもので、かすかな金糸で控えめに礼装感が表現されていて、大好きな、そしてとても使い手のいい一本。
全体に、すべて控えめな存在感のものを組み合わせて、バッグが浮かび上がるようにとコーディネイトした。会場にいらした方に、
「遠くから見るとバッグが引き立っていて、意図が良く分かりました」
と言って頂けて、とても嬉しかった。
そうそう、足もとも、まだ母の介護をしていた頃に誂えて、一度も履く機会のなかった夏用の絽の草履を、4年?あるいは5年?越しに、やっと下ろすことが出来た。
Sサイズの草履が年々買えなくなる小足受難時代の中、辻屋さんで特注で作ってもらったもので、ようやく日の目を見たのである!
上の3枚の写真は、展示会に勢揃いした花傳のバッグの数々。重厚な伝統美のライン、華やかな大人かわいさを愛でるライン(私のバッグはココだろう)、紬や江戸小紋に合うきりりとしゃれたライン。あすかさんの美意識の幅広さにただただ驚嘆する。そして次はきりり系が‥‥などとまたまた胸が揺れ動いてしまうのだけれど~ラララ~♪
そして、開腹手術から、今月末でちょうど2年。
手術自体は成功に終わったものの、腹腔内での腸の位置が定まらないという、十人に一人ほど出る後遺症をまんまと発症し、腰紐や帯での締めつけが激しい不調を起こすため、きものをあきらめざるを得ない落胆の日々だった。
しかも、電車など乗り物の振動も腸の不調につながることが多く、つまりは、締め付け×振動。危険度が二乗に上がる〝電車での着物外出〟は私にとってとてつもなく高いハードルだった。
会の四日前、まだ自分の着付けだけでこの難関を超えることは難しいと判断して、着付け師の川口恵美子さんに来て頂くことにした。彼女の〝加減を知る〟素晴らしい着付け技術の力もあって、どうやら初めてこの難関を克服出来、今、達成感に包まれている。健康な人にはごく当たり前の〝電車できもの外出〟がこんなにも難しいものであることを、多くの方に知って頂けたらと思う。
もちろん、これからも、無理はせず、ゆっくりと。次は自分の着付けで電車に乗って、無事家に帰って来られるように(家に帰るまでが遠足!)。
それでも、再びきもので街を歩き、やっぱりきものって本当に楽しい、私は本当に本当にきものが好き、と、しみじみと思うのだった。
アトリエ花傳の展示会は9日まで代官山「ヒルサイドテラス」E棟ギャラリーにて。
アトリエ花傳 ホームページ:https://atelier-kaden.com/