MAYA from West End

Diary

2010/12/24 お着物の記*冬の初めのコーディネート四通り

最近あまりにもばたばたと忙しく、日記の更新が滞っておりました。
年末もギリギリまで仕事の連続の私でございます。
そんな日々の中、でもやっぱりお着物は着ています!
今日の日記は、十二月に着たお着物を四連発でご紹介!

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*臙脂色の色大島は、椿の文様を織り込んだもの。
 と或る会合の日に着て行きました。

*帯は、一見白に見えるのですが、よーく目を凝らすと淡く赤い色が筋状に見えて来ると思います。
山形県の、紅花染めの帯。名前の通り、紅花の汁で染めた帯です。
もっと大々的に紅色に染めることももちろん出来るのですが、
この帯については、「よく見ないと分からない」くらいに淡く染めているところがいかにも通っぽい。
こういうのは着物ならではの粋な感覚ですね。お気に入りの一本です。

*帯締めは、ピンク色に近い紫。
帯揚げは、実はスカーフを代用しています。
このスカーフ、はるか昔に父が山形に旅行したときに、お土産で買って来てくれたもの。
実はこれも紅花染めなのです。
このスカーフからも分かる通り、紅花染めはこんなにくっきりとした赤にも染められる‥
そして、黄色にも染められるんですね(他の染料と混ぜると色が変わるそう)。
紅花つながりで、敢えて帯揚げとして使ってみました!

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*小豆色の無地の紬着物。これは、おそらく結城紬だと思います。
私の着物の大部分は祖母が買い集めたもの、そして祖母が染めたものをそのまま着ていますが、
悲しいことに、その祖母は晩年アルツハイマー症にかかってしまいました。
そのとき、恐らく着物に対してとても強い思い入れを持っていた祖母は、
たとう(着物を包む袋)から着物を出しては別のたとうに入れ、
また別のたとうから着物を出しては別のたとうを開け‥ということをどうも繰り返していたようなのです。
そのため、我が家の着物は、たとえば「白大島」と書いてあるたとうを開くと「藤色の羽織」が入っていたり、「鶴亀染め帯」と書いてあるたとうを開くと「花柄の小紋」が入っていたり‥‥。
更に、祖母を専門の施設に入れるために家を売ることになり、
そのときにバタバタと着物類を持ち出したため、
着物の生地の由来を示す「証紙」という紙を、全て置き去りにして来てしまいました。
残念なことに我が家の着物のほとんどは、来歴が分からなくなってしまったのです。(我が家の悲しい歴史です)

しかし、この小豆色の紬は、一見何でもない無地に見えて着ると着た人をとても格上に見せてくれる力があります。
恐らく、結城紬ではないかと思います。
「結城は秋から冬に」とよく言いますが、その意味がよく分かる、ぽかぽかと暖かい着物。
仲良しの編集者のお友だち二人との食事会に着て行きました。

*帯は、祖母が染めた牡丹唐草文様の名古屋帯。
でも、大胆にも黒で染めているため、あまり牡丹には見えませんよね。
モダンな植物文様のように見えるところがとても気に入っている一本です。

*帯締めと帯揚げは黒で統一。帯揚げには小さな赤の絞りが入っています!

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*祖母が染めた向かい鶴文様の小紋。
超超伝統的な文様であるにも関わらず、着ると現代風なかんじがする素敵な小紋です。
我が祖母ながら、この色感覚に脱帽。心から尊敬してしまいます。
仕事上のお願い事があり、或る方とペニンシュラホテルでお茶をした日、
また、お茶のお稽古→青山CayにME:MOという中国のアーティストのライブを聴きに行った日、に着ました。

*帯は、羅馬(ローマ)の歩兵と椰子の木などを織り出した名古屋帯。
これは、祖母、或いは曾祖母のものだったような気もする‥と母が言っていました。
昭和初期って、こういう洋風な文様が流行ったのですよね。
着物道楽だった祖母、或いは曾祖母も、流行の最先端に乗って買い求めたようです。

*帯締めは、藤色。帯揚げは、抹茶色の絞り。

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*さてさて今日最後の着物は、ごく最近誂えたもの。
‥と言っても、私が買ったのではなく、母が「娘と兼用」ということで買ってくれたお着物です。
(ママ、ありがとう‥)
「江戸小紋」と言って、江戸時代にまさに江戸発信大流行した着物。
とてつもなく細かな文様を伊勢地方で型紙に彫り、それを江戸で染め出すという技法を使っています。

*この江戸小紋は、よくよく近づいて見ないと分からないのですが、
一つ一つ、極小のドットのように見える文様が、実は桜の花びらの形をしています。
しかも均一に花びらを散らすのではなく、わざと不規則に反物全体に散らしているのですね。
そこからはんなりとした色気が生まれている、何とも素敵なお着物です。
現在日本にたった六人しかいないという江戸小紋の伝統工芸士(←国の認定資格です)、
金田昇さんの作品。吉祥寺のふじやさんで誂えました。

*この着物、ふじやさんと金田さんの計らいで八掛(=裏地のこと)もまたとても素敵なのですが、
また桜の季節が来たときにでも、そちらはご紹介したいと思います!楽しみにしていて下さいね。

*帯は、若々しい更紗の博多帯。
江戸小紋が黒で、今の私の外見には粋過ぎるので、帯で華やかさを加えてみました。
今流行りの「地味着物」、私は大っ嫌いなのであります!

*帯締めは、上の色大島で合わせたのと同じもの。帯揚げは、淡い藤色で。

*このコーディネートは、友人たちとサントリー美術館の「蔦屋重三郎展」を見に行った日に着て行きました。蔦屋重三郎というのは歌麿や写楽、山東京伝を発掘した江戸の出版&美術プロデューサー。
江戸の粋そのものを体現した人物にスポットを当てた展覧会ですから、
「江戸小紋でしょう、やっぱり!」とこの着物を択びました。
しかも江戸時代、それも蔦重(つたじゅう)の頃と言うのは、
東南アジアの織物がたくさん日本に入って来て、
日本人が初めて縞文様や更紗文様を身につけ始めた時代。
だから帯を更紗文様にして、私なりに江戸時代へのオマージュにしてみたのです。

そうしたら‥!
会場に展示されていた歌麿の絵の中に、
この日の私とほぼ同じコーディネートをしている女性がいました!
黒地の小紋に、更紗の帯。
江戸の心にちょっと近づけたかな?と嬉しくなった瞬間でした。

‥と、年末もお着物街道驀進中の私です。
パーティー仕様のお着物については、また別の回にご紹介致しますね!